研究課題/領域番号 |
26800247
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
國井 勝 気象庁気象研究所, 予報研究部, 研究官 (70370327)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | データ同化 / 大気海洋相互作用 / 台風 / アンサンブル予報 |
研究実績の概要 |
気象庁非静力学大気モデル(NHM)に鉛直1次元海洋混合層モデルを結合したモデルを用いて,海面水温のアンサンブル摂動の時間発展を考慮した大気データ同化実験を前年度に引き続き実施した.鉛直1次元海洋混合層モデルでは定常状態である海流の場を陽に表現できないため,長期間のデータ同化サイクルを実施した場合に海面水温のバイアスが顕在化した.海洋表層の乱流混合を決めるパラメータであるバルクリチャードソン数の調整により,この海面水温バイアスが改善されることを示した.本結合モデルを用いた大気データ同化システムを2014年の台風第11号(Halong)の事例に適用し,台風予報に対するインパクトを調査した.鉛直1次元海洋混合層モデルを結合した効果は進路予測には明瞭に見られなかったものの,台風強度や降水の予測に対しては正のインパクトが見られた.台風予報の改善を示唆した本結果については,既に論文にまとめ,現在査読中である. また,NHMに波浪モデル及び海洋層モデルを結合した大気波浪海洋結合モデルを組み込んだデータ同化システムを前年度に引き続き開発している.2008年の台風第13号(Sinlaku)の事例について,20日間のデータ同化サイクル実験を海洋モデルの予測値を引き継ぐ形で実施したところ,引き継がない時よりも台風発生初期の中心位置及び発達期の強度変化に,より明瞭なインパクトが認められた.しかしながら衛星海面水温観測と比較すると,台風に伴う海面水温低下域は予測値を反映し,より北西側にシフトするという問題点が見られた.このため,データ同化時に海面水温を制御変数化することにより,観測と整合をとるための開発を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の計画は,大気波浪海洋結合モデルを結合したデータ同化実験の実施,および海面水温観測データを同化できるようデータ同化システムの拡張を行うことであったが,これらについては既に完了,および実装済みであり,現状ではおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築された実験システムを拡張し,海水温,塩分データも同化できるようにする.解像度を数km としたデータ同化実験を行い,これに観測データのインパクト推定手法を応用することで,ITOP 実験期間中に得られたSST,海水温,塩分データを含む全観測データについてインパクト推定を行う.台風強度予測の観点から,どのような観測データが有用であるかを明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は外部計算機として東大FX10の賃料を計上していたが,気象研究所内部の計算機で計算を行うことができたため,その分の予算を次年度に繰り越す.
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次年度使用額の使用計画 |
計算結果を格納するための外付けハードディスク,および海外出張旅費に充当する予定である.
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