モルジブ諸島周辺の流れの構造を調べた。赤道上の二点(東経80.5度と90度)に設置された音響式流速系の現場観測値と大循環モデルの出力を調べるとともに、単純化された1.5層モデルを用いて理想化された数値実験を行った。その結果、インド洋の表層赤道ジェットがモルジブ諸島に衝突した結果、ジェットの蛇行が生じ、音響式流速系の流れの観測値に現れていたことがわかった。 赤道インド洋付近に展開されている10基の音響式流速計の観測値を用い、密度躍層より上の流れの鉛直構造および東西方向の位相速度を調べ力学について議論した。その結果、季節や深さによって異なる波動モードが卓越し、位相速度の向きが時空間的に複雑に変動することが分かった。 アルゴフロートの観測値から得た水温・塩分プロファイル、および漂流深度(約 1000 m)における絶対流速データを用い、統計的手法によってインド洋の循環の平均場のマップを作成した。従来の散発的な観測や数値モデリングによって知られていた知見を裏付けるとともに、従来は知られていなかった新しい特徴を発見した。これによってインド洋の平均場の流れの詳細な構造を、高い信頼性で特定することができた。 各国の研究機関が提供する大気海洋結合モデルの長期積分結果を入手し、インド洋の平均場の再現性を調べた。その結果、多くのモデルがアラビア海の温度躍層を深く見積もっており、温度躍層の深さの水温が高すぎることが分かった。詳細な解析を行ったところ、モデル内ではアラビア海北部の冬季混合層が深すぎ、高温・高塩な北アラビア海高塩分水とペルシャ湾水が過剰に生成されており、高温バイアスが引き起こされていることを明らかにした。
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