温暖化傾向の十年規模変調について,数年規模の大気海洋変動に注目しながらプロセス理解を深めた。2000年代の温暖化傾向の変調(昇温トレンド弱化)にまつわる観測的特徴として,他の年代には見られないような,赤道太平洋における数年規模での暖水の東方伝播停滞があるが,その予測は一般に難しい。気候モデルの感度実験によれば,熱帯大西洋の大気海洋変動と深く関わるような貿易風変動の果たす役割は大きい。強い貿易風は西太平洋で暖水の東方伝播を妨げるよう働き,同時に,南北半球側のいずれにも生じる高気圧偏差が太平洋低緯度の赤道外に水温上昇を招いて,その西方伝播を通じて西太平洋での昇温を強めるように働くことがわかった。
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