研究課題/領域番号 |
26800254
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鍵谷 将人 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30436076)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イオ / 酸素原子 / 6300 / 偏光 / 高分散分光 / 光ファイバアレイ |
研究実績の概要 |
木星衛星イオの高分散偏光分光観測を実現するために、(1)高分散分光器用光ファイバアレイを開発し、(2)ハワイハレアカラ観測所において試験観測を実施した。また、より高精度な偏光測定を空間2次元で実現する可能性を探るため、(3)偏光イメージャ(Dipol2)による試験観測を実施した。 (1)交付申請書では、観測に利用する望遠鏡として、ハワイ大学天文学研究所所有の50cm望遠鏡(SOLARC)を挙げていた。しかし、2014年9月以降、より口径が大きく使い勝手の良い東北大学の60cm望遠鏡(T60)が利用できるようになり、本研究ではT60で利用できる可視高分散分光器(波長分解能70,000)を利用することとし、この分光器と望遠鏡焦点とを結ぶ光ファイバアレイを開発した。これを用いた試験観測は2015年4月に実施する予定である。 (2)2014年12月から2015年3月に、T60と高分散分光器を組み合わせた試験観測を実施し、観測に必要な波長分解能と結像性能を確認した。また、SprintA/EXCEEDとの連携観測を実施し、イオ周辺電磁環境を多角的に検証することのできるデータを取得した。 (3)2015年1月に、フィンランド・Turku大学のAndrei Berdyuginらの協力により、10E-6におよぶより高精度な偏光量の2次元分布が測定できる偏光イメージャ(Dipol2)をT60に取り付けて、偏光標準星の試験観測を実施した。その結果、2015年5月に本観測装置に酸素原子発光のみを透過する狭帯域干渉フィルタを装備することにより、イオ周辺酸素原子発光の偏光分布を2次元的に取得することができるようになると期待できる。これら(1)(2)(3)の観測・研究について、2014年5月の日本地球惑星科学連合大会および2014年11月の地球電磁気・地球惑星圏学会で成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第1目的はイオ周辺の偏光分光観測から平均的な酸素原子発光の偏光度を測定することにある。研究実施計画に基づき、2014年度はそのための観測機器の整備と試験観測に宛てられた。研究実績の(1),(2)に示したとおり、観測の準備作業はほぼ完了し、2015年4月から5月の期間に本観測を実施することで、研究の第1目的は達成されると期待される。 本研究の第2目的はイオ周辺酸素原子発光の偏光の、より詳細な分布を明らかにすることである。計画では、より大きな望遠鏡を用いる方法を検討していたが、研究実績の(3)で述べたとおり、フィンランドの研究者の協力により、現在用いてるT60(口径60cmの望遠鏡)を用いても十分な詳細な分布が得られると期待できる。したがって、研究の第2目的の達成についても見通しが立ちつつある。 以上の点から、研究実施計画に基づき、概ね順調に推移しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度に整備した観測装置を用いて、2015年4月から5月の期間に本観測を実施し、イオ周辺の偏光分光観測から平均的な酸素原子発光の偏光度を導出する。また同時期に、フィンランドの研究者の協力により設置した偏光イメージャ(Dipol2)を用いて、イオ周辺酸素原子発光の偏光の、より詳細な分布を明らかにする。これらの結果をもとに、イオ周辺での電子温度異方性との対応を考察し、偏光観測を電子温度異方性のリモートセンシング手段として確立することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に実施する観測に必要な偏光素子の購入費用として計上するため、翌年度の支出に繰り越す。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度に実施する観測に必要な偏光素子のを購入する費用として計上する。
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