研究実績の概要 |
木星衛星イオ近傍の酸素原子発光の高分散偏光分光を実現するために、ハワイ・ハレアカラ観測所の高分散分光器をもとに、偏光測定機能と、コロナグラフ機能を備えた偏光分光器を新たに開発した。この分光器は、従来と比較して木星本体からの副鏡支持構造による回折光を1/10以下に低減し、偏光プリズム(サバール板)とアクロマティック波長板を組み合わせることで、直交する偏光成分のスペクトルを同時に取得することができる。酸素原子発光の検出に必要な30,000の波長分解能を有する。本観観測装置を用いて木星衝前の観測適期となる、2016年1月から2月に3回のイオ近傍酸素原子(630nm)発光の偏光分光観測を実施した。観測条件の良かった2016年2月11日の観測では、イオが木星の日陰に入ってから約15分間の観測に成功し、イオ近傍酸素原子発光を対信号雑音比2以上の精度で検出することに成功した。今回1回のみの観測からでは、50%を上回る精度での直線偏光度の導出はできないが、2016年5月以降に複数回訪れる観測好期に引き続き観測を実施することで、目標とする15%を上回る精度での偏光測定結果を得ることができると見込まれる。本研究での観測と極端紫外宇宙望遠鏡ひさきとの連携観測により、イオ周辺電磁環境を多角的に検証し、2015年5月の日本地球惑星科学連合大会および2015年11月の地球電磁気・地球惑星圏学会で成果発表を行った。また、2016年5月の日本地球惑星科学連合大会でも成果発表を行う予定である。
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