研究課題
本研究の目的は、プラズマが太陽から惑星間空間までの間のどこでどのように加熱・加速され、太陽コロナ・太陽風の形成に至るのかを明らかにするため、観測データと数値シミュレーションを密接に結合させたモデル「太陽コロナシミュレータ」を構築することである。本年度は、太陽光球磁場の観測データに基づいて三次元太陽コロナ磁場を精密に再現する非線形フォースフリー磁場モデルの改良を行った。これにより、磁場モデルによって計算された磁力線の構造と、太陽コロナの極端紫外線画像で観測されるコロナ磁気ループとの直接比較が可能になった。このモデルを用いて、2014年10月に現れた大規模フレアを連発した活動領域について、磁場構造の時間発展過程の解析を行っている。本研究の特色は、観測に基づいた現実的な数値磁気流体シミュレーションに対して、独立した観測結果を用いた検証によってシミュレーションモデルを修正する「データ同化」の手法を取り入れる点である。検証に用いるデータは、宇宙探査機による太陽風のその場観測や極端紫外線・X線画像を用いる。これらに加え、太陽コロナ・太陽風中の乱流もその場観測によって得られるうえに、太陽コロナ・太陽風の形成にとって重要な役割を果たしている物理量である。本年度は、磁気流体力学シミュレーションの中で乱流の生成・輸送・散逸を取り扱うモデルの開発を行った。次年度以降、実データに基づくシミュレーションを進め、三次元磁場構造の中での乱流の生成・輸送・散逸とプラズマの加熱・加速との関係を明らかにしていく。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、当初の計画にはなかった、太陽風中の乱流の生成・輸送・散逸を取り扱うシミュレーションモデルの開発を行った。乱流の生成・輸送・散逸の過程は、太陽コロナ加熱と太陽風の加速に重要な役割を果たしていると考えられているため、この過程における未知のパラメータをデータ同化によって決定する方針へと変更した。太陽風中の乱流の輸送を解くモデルはおおむね完成し、現在論文執筆段階にある。
今後は、三次元磁場構造の中での乱流の生成・輸送・散逸とプラズマの加熱・加速との関係を明らかにしていく。本年度開発した太陽風中の乱流輸送-磁気流体シミュレーションモデルを用いて、実データ太陽風シミュレーションを行う。データ同化手法により、太陽風中での生成・散逸のパラメータを最適化を行う。また、当初初年度に計画していた太陽コロナと太陽風の間をつなぐ1次元モデルの開発を進め、太陽コロナ領域の乱流輸送-磁気流体シミュレーションを行う。亜音速領域である太陽コロナでは、境界条件の取り扱いなどはまだ開発要素であるため、開発と並行してパラメータの最適化を進めていく予定である。
昨年度導入した専用の計算サーバおよびコンパイラの合計金額が予算をオーバーしたため、最終年度から前倒し請求を行った。前倒し請求は10万円単位でしかできなかったため、これにより次年度使用額が発生した。
次年度の学会・研究会への参加旅費および、論文出版費へ合算予定。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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