研究課題/領域番号 |
26800257
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桂華 邦裕 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10719454)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 磁気嵐 / 地球内部磁気圏観測 / 酸素イオン加速と供給 / データ解析ソフトウェア開発 / Van Allen Probes衛星 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本年度は、交付申請書の「研究の目的」に記載した課題②「プラズマ圧O+/H+比の突発的増加を引き起こす「内部磁気圏での非断熱加速」の有無 」と課題③「EMIC波動との相互作用に伴うピッチ角散乱による「プラズマ圧の減少率」」を、「研究実施計画」に記載した(B)と(C)の方法を用いて実施した。
課題②について、2013年6月6日の磁気嵐主相中にVan Allen Probes衛星2基によって観測された高エネルギー酸素イオン(>100 keV)フラックス急増現象を事例解析し、フラックスの急増は局所的な電場増加・プラズマ注入に起因し、酸素イオンは断熱的に加速されていることを示した。また、この酸素イオン群は磁気嵐発生前に電離圏から内部磁気圏に沿磁力線に供給されていて、内部磁気圏到達時には100 eVから10 keVまで達していたことを新たに示した。この研究成果を論文にまとめ、国際学会誌に出版した。このような比較的暖かいイオンの断熱加速の頻度や発生場所を明らかにするため、多数のフラックス急増現象を統計的に解析し、国際学会誌に投稿する論文を執筆中である。
課題③については、Van Allen Probes衛星2基が非常に近い(数1000 km以下)距離を飛翔しながらEMIC波動を観測しているイベントを解析した。EMIC波動の断続的な励起や発生時刻の衛星間の差異は確認できたが、対応するイオンフラックスの変動ははっきりとは確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Van Allen Probes衛星で得られたデータを集中的に解析し、磁気嵐中に高エネルギー酸素イオンが突発的に増加する現象の事例解析および統計解析を、ほぼ当初の計画通りに実施することができた。また、EMIC波動の複数衛星同時観測から、波動の有無とイオンフラックスの関係を調査した。前者では、これまであまり注目されていなかった比較的暖かい酸素イオンの電離圏からの直接供給の重要性を示した。後者では、Van Allen Probes衛星搭載の粒子検出器の角度分解能では、イオン消失量を定量化することは難しいことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度12月に打ち上げられた「あらせ(ERG)」衛星で得られるイオンおよび磁場データを用いて、課題①から③まで、地方時方向に幅広く位置する編隊飛行の特徴を生かした解析を行う。課題①「プラズマ圧に最も寄与する「最重要エネルギー帯」の空間分布と磁気活動度依存性」については、Van Allen Probes 衛星が一つの検出器ではカバーしきれないエ ネルギー帯(10-180 keV)を単一検出器で観測する「あらせ」衛星搭載MEP粒子検出器で得られる連続したエネルギースペクトルを集中的に解析する。課題②については、突発的酸素イオン増加現象の空間的な広がりとエネルギースペクトルの相違・類似を調査する。課題③については、衛星スピン周期よりも短い時間分解能のデータを解析することで、イオン消失量の定量化とEMIC波動との相関関係を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では研究成果を発表する論文の出版が来年度になったため、今年度の支出として予定していた論文掲載費用を翌年度に使用することになった。 あらせ(ERG)衛星を用いた研究成果を国際学会で発表し国際情報交換を行う予定であったが、同衛星の打ち上げが今年度後半となったため、今年度の支出として予定していた旅費を翌年度に使用することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、現在執筆中の論文の掲載費用とIAGA国際会議への出張費に使用する計画である。
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