研究課題/領域番号 |
26800258
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
横田 勝一郎 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (40435798)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 月 / 外気圏 / 質量分析 / ピックアップイオン |
研究実績の概要 |
本研究は、主にKAGUYA衛星搭載質量分析器の観測データを利用して、月希薄大気の密度、構造及び組成を算出して、生成消失機構を推定した月希薄大気の数値モデルを構築することを目的としたものである。平成26年度はKAGUYA衛星の観測データ解析作業を行うといった観測的研究を進めた。その成果の一つとして、KAGUYA衛星の観測によって得られた月希薄大気の経度方向での空間分布に関する研究成果の誌上発表(平成25年度1度目の投稿を行い、平成26年度はその後の改訂作業を行った)した。経度方向の空間分布は地上観測では視線方向に重なってしまい決して得られないものであるため、今回KAGUYA衛星で得られた観測結果が世界初である。国内の学会においても本研究成果に関する口頭発表を行った。一方で、月希薄大気の数値モデルの構築についてもハード・ソフトの両面で準備を進めている。先の誌上発表論文の改訂作業の際は、簡易的なモデル計算も行い、KAGUYAの観測成果を理論面から評価し、月希薄大気の生成と消失に関して議論を行った。その中で、日々宇宙空間に失われている月の希薄大気を維持するためには外部からの供給が必須であることを提示し、その供給量を見積もった。外部からの供給を行う候補としては惑星間空間に漂う塵が一つ挙げられる。米国の月周回衛星ARTEMISや月大気観測衛星LADEEの観測成果にも注視し、研究集会等の機会に関連する研究者らとの議論も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KAGUYA衛星搭載質量分析器の観測データを使った観測的研究は当初予定していた通りに進展し、月希薄大気のモデル化に必要な、構成粒子の密度、構造及び組成に関する情報が多く得られている。モデル化を行うハード・ソフトの環境も整え、平成26年度に誌上発表した論文の改訂作業の際には、簡易的なモデル計算も行うことでKAGUYAの観測成果を理論面から評価することが出来た。 研究成果が出る一方で、他の研究者との議論から、KAGUYA衛星の観測データによる観測的研究を行うべき新たなテーマが幾つが出てきている。一例として、月起源及び外部起源の月周辺酸素イオンの月周辺での動向などが挙げられる。当初は観測的研究を平成26年度までとしていたが、研究テーマが発展的に産出されてきたため本年度も継続した方がよい状況となった。モデル化作業と並行して観測的研究も行うことで、モデル化自体の精度の向上に繋がると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
KAGUYA衛星の観測データによる観測的研究は平成26年度までと当初は計画していたが、研究の進展に伴って、月起源及び外部起源の月周辺酸素イオンといった新たなテーマが議論されるようになった。月周辺での酸素イオンの動向は、月希薄大気の研究のみならず酸素同位体による月形成史の研究といった惑星科学的な研究に対して重要であると考えている。従って平成27年度も観測的研究を継続する。当初予定していた通り、月希薄大気のモデリング作業にも重きを置く予定である。観測的研究の成果を適宜反映させ、精度のよいモデルを構築する。平成27年度は室内実験による月希薄大気の生成機構の模擬も予定している。研究を遂行する上での課題としては、実験室作業は研究費用への依存が最も大きい項目ではあり、平成27年度は主に予算等の理由で予定していた資材を全て準備出来る状況ではない。しかしながら、レゴリス模擬試料の準備とUV及びイオンビーム照射実験は行えると見積もっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外で行われた研究集会への参加旅費とモデル作業用PC購入費に使用し、端数42円が生じた。小さすぎたため0にすることが困難であった。
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次年度使用額の使用計画 |
少額であるため物品費等に含めるが使用計画に変更は生じない。
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