研究課題
本研究は、主にKAGUYA衛星搭載質量分析器の観測データを利用して、月希薄大気の密度、構造及び組成を算出して、生成消失機構を推定した月希薄大気の数値モデルを構築することを目的としたものである。アルカリ元素(ナトリウムとカリウム)に関しては、昨年度までにモデリングを達成し誌上論文にて発表している。平成27年度も継続してKAGUYA衛星の観測データ解析作業を行ったが、特に酸素イオンに注目した研究に取り組んだ。酸素イオンも月から宇宙空間に放出されているが、一方で月が地球磁気圏内に滞在する期間に地球起源の酸素イオンが月全体に漂着していることも観測されてた。2008年の通常観測から一年分の地球から月への酸素イオンの輸送量を見積もった。アポロ回収試料を含む月起源物質において、酸素同位体比が特に予測外の数値を示すことがこれまで報告されているため、本研究結果がその解釈に有用であると考えている。国内の学会においても本研究成果に関する口頭発表を行い、現在誌上論文投稿の準備を行っている。また、本研究のKAGUYAの質量分析器データの観測成果から惑星起源粒子の同位体計測の重要性を認識し、宇宙機搭載の同位体計測用の高分解能質量分析器の開発に別途着手するに至った。KAGUYA質量分析器の後継機が火星衛星サンプルリターン計画への搭載が採択されたため、本研究成果は火星衛星周辺での観測時にも役立つことを期待している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Icarus
巻: 250 ページ: 238, 248
doi:10.1016/j.icarus.2014.12.007
http://www.kaguya.jaxa.jp/ja/science/result_of_kaguya_j_2014.htm