研究課題
中期原生代はこれまで研究対象としての優先度が低かったが、近年の微化石の相次ぐ発見によって注目を集めている。この時代は動物誕生前の過渡期にあたり、中期原生代の古環境復元を最終目的とし、化石が比較的多産する北中国蘇県(Jixian)において地質調査を行い、堆積構造の観察と岩石採取を行った。北中国蘇県には約16-8億年前の大陸地殻上で堆積したとされる堆積岩が連続して露出する。基盤となっている片麻岩は花崗岩を源岩とし、ざくろ石を含む事から高度の変成作用を被っている事が分かった。炭酸塩岩の中には良好に保存されたストロマトライトが数か所に見られ、スタイロライトやオンコライト、スランプ構造も見られる。また砂岩中にはリップルが見られ、これらの堆積構造はいずれも浅海域での堆積を示唆する。中期原生代の地層は一般的に絶対年代による年代の制約が少ない。そこで基盤岩となっている片麻岩、貫入している花崗岩、不整合直上の砕屑岩を採取し、これらからジルコンを分離し、カソード像の観察を経てからLA-MC-ICP-MSにてU-Pb年代分析を行った。その結果、基盤岩の片麻岩形成年代は約25億年前である事、花崗岩の形成年代は約2.06億年前である事が明らかになった。砕屑岩中には基盤の片麻岩由来の砕屑性ジルコンがどの試料においても最も多く含まれ、北中国Jixian地域は約16-8億年前を通してそれほど広い後背地をもたない事も明らかになってきた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は北中国蘇県地域における予察的な地質調査を行う事を目的としており、予定していた夏に調査に行く事はできなかったが、2月に訪中する事によって達成した。最重要試料については既にジルコンのU-Pb年代分析を済ませ、基盤岩、花崗岩の年代決定を終え、砕屑岩中の砕屑性ジルコンに関しても後背地推定に有用な年代分析結果を得る事ができた。3月末に全ての岩石試料が日本に届き、今後さらに分析を進めていく予定である。一方で当てにしていた黒色頁岩の一部は風化が激しく、予定していた化学分析に耐えうるものではない事も明らかになってきた。残りの黒色頁岩についても早急に予察的分析を行い、分析可能の是非を見直していく必要があると感じている。また、マンガン鉱床についても先行研究に記載されているような露頭は既に無い事も確認してきた。これについては多少調査地域を拡大してでも採取可能な地域の選定を進めていく必要がある。
2014年度に採取した砕屑岩中の砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定を追加して行う。成果に関しては地球惑星科学連合大会や地質学会にて発表した後、議論において戴いたコメントを参考に論文を書き上げ国際誌に投稿する。既に採取済みの岩石から薄片を作成し、岩石の構成鉱物と保存状態を確認する。具体的には同位体(SrやMo)や濃度測定予定の各元素(REEなど)の2次的移動について考察する。炭酸塩岩や黒色頁岩、転石ではあるが採取してきたマンガン鉱石について最も保存状態の良い試料を選定する。2015年度も北中国蘇県において地質調査を予定している。上記の薄片記載や予察的分析を経てから岩石採取地を絞り込み、柱状図を作成しながらの連続採取を行う。これらの試料が届き次第予察分析を行い、Re濃度が高濃度の層準を絞り込む。もし上記元素の濃度全てに関して期待する結果が得られなそうな場合は有機物の炭素・窒素同位体比や有機分子の特定に焦点を変更し、中期原生代の微生物活動の特定に全力を尽くす。
北中国蘇県における地質調査の日程が当初予定よりも短く、安く敢行できたため。
2015年度11月に予定している北中国蘇県地域での地質調査費用に充てる。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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