研究課題/領域番号 |
26800260
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
草野 有紀 金沢大学, 自然システム学系, 博士研究員 (00635972)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 沈み込み帯 / 火山地質学 / 初生マグマ / オマーンオフィオライト / 無人岩 / ガラス包有物 |
研究実績の概要 |
本研究では,沈み込み帯(海溝)形成初期に発生したマグマの組成変化およびマントルの進化過程を解析することにより,沈み込み帯発生・発達過程を明らかにすることを目指している。オマーンオフィオライトの島弧火成活動では、初期に島弧ソレアイト、後期に無人岩を噴出したことがわかっている。平成26年度は沈み込みに伴うマグマ組成の変化について、沈み込んだスラブ由来流体やメルトの寄与、および起源マントルの組成の違いを検討した。検討には新鮮な火山ガラスと、砂から分離した単斜輝石の主要・微量元素および同位体組成分析結果を用いた。その結果、島弧ソレアイト生成にはスラブ由来流体のみが、無人岩にはスラブ由来流体と堆積物メルトの両方が必要であることがわかった。化学組成を用いて簡単なモデル計算を行ったところ、島弧マグマを発生したマントルは島弧火成活動期を通じて再融解を繰り返し、微量成分に枯渇していったと考えられる。この結果、古島弧へのスラブ由来物質の寄与が明らかとなり、沈み込み帯形成初期のウェッジマントルの化学的進化過程を解明する重要なデータが得られた。 冬季に3週間にわたり現地調査を実施し、古島弧火山列における火成活動の変化を明らかにすることを目的として新たに4地域で地質調査を行った。既調査地域は補足調査および追加サンプリングを行った。年代測定可能な新鮮な岩石試料からは、古島弧の噴出年代が明らかになることが期待される。クロムスピネル斑晶を含む溶岩・火砕岩試料からは、クロムスピネル中のガラス包有物から初生マグマの生成条件が明らかになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期島弧マグマの化学的進化過程について、新鮮な火山ガラスおよび単斜輝石組成から上述の結果が得られた。今後、地質調査と化学分析結果の解析を進めることで古島弧火山列における各地域の火山活動が明らかになると考えられる。これらは本研究期間内で解決を目指す3課題: (1)沈み込み軸方向の火成活動の復元、(2)スラブ成分のマグマ組成への影響、(3)島弧化マントル発達過程の解明のうち、(1)と(2)に相当し、本研究は現在までおおむね順調に進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
40Ar/39Ar年代測定を用いて初期島弧火成活動の進化過程を高精度に決定する。これにより火成活動に詳細な時間軸を入れることができ、噴出時期とそのテクトニクスの変化を解析することが可能となる。平成27年度4月に研究拠点を産業技術総合研究所に移したため、年代測定に関しては分析だけでなく議論もしやすい環境となり、より効率的に研究が進展すると期待される。それ以外の分析機器も充実しているため、研究の進行に大きな影響はないと考えられる。 これまでに明らかとなった初期島弧マグマの化学的進化過程については、現在論文投稿準備中であり、平成27年度中に国際科学雑誌に投稿を見込んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はオマーン国滞在日程が当初予定より1週間程度短かくなった上、円安を考慮していた採取試料の運送費が見積りよりも安く抑えられたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在執筆中の英語論文の校正費用に充てる計画である。
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