研究課題/領域番号 |
26800262
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
高島 千鶴 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (10568348)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 縞状組織 / トラバーチン / 鉄質堆積物 |
研究実績の概要 |
インドネシア・スマトラ島の北部のDolok Tingi Rajaにある炭酸塩堆積物(トラバーチン)が発達している温泉を調査した.トラバーチンには縞状組織が見られる部分がある.これまでの研究では,酸素発生型光合成細菌の関与が指摘されてきたが,本調査地ではシアノバクテリアは検出されなかった.代わりに非酸素発生型光合成細菌群集が検出され,それらが縞状組織を形成していると考えられる.このモデルは酸素濃度が低い太古代のストロマトライトの生成過程に応用できる. また,鹿児島県霧島市の塩浸温泉の調査を開始した.塩浸温泉の湯元には縞状鉄質堆積物,下流には表面が緑色のバイオマットで覆われた縞状トラバーチンが見られる.湯元付近に見られる鉄質堆積物は非常にもろく,フェリハイドライトで構成されているある.フェリハイドライトは幅10ミクロン程度のフィラメント状で,樹枝状に分岐し伸びている.樹枝状フェリハイドライトが繰り返し成長し,幅200-500ミクロンの縞状組織を形成している.また,フェリハイドライトの中に,幅n単位の有機物のようなフィラメントが確認できた.これらのことから,鉄沈殿が微生物により引き起こされたことを示唆する. 下流のトラバーチンはアラゴナイトが主体である.アラゴナイトは細粒な結晶をベースとして大きな結晶が成長し,それが繰り返して幅100-500ミクロンの縞状組織を形成している.結晶間には微生物の代謝生成物であるEPSが多く見られる.さらに,バイオマットを蛍光顕微鏡で観察すると,シアノバクテリアの自家蛍光を示した.おそらく,トラバーチンの縞状組織にはシアノバクテリアの光合成が関与していると考えられる. スマトラ島Dolok Tingi Rajaの温泉および塩浸温泉のこれまでの研究成果はいくつかの学会で発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インドネシア・スマトラ島Dolok Tingi Rajaにある温泉について,水‐鉱物‐微生物の関係性を明らかにし,トラバーチンの新しい生成過程を示した.これは古代ストロマトライトの生成過程にヒントを与えるものである. 鹿児島県塩浸温泉については,水質・堆積物の基礎的な情報を得ることができ,堆積物の沈殿や縞状組織に微生物が関与していることが判明した.
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今後の研究の推進方策 |
鹿児島県塩浸温泉の堆積物について研究を進める.平成27年度は水質や基礎的な堆積物の観察を終えたので,今後は堆積物に見られる縞状組織の成因や周期を明らかにする.具体的には,堆積物の沈殿や縞状組織に関与していると考えられる遺伝子解析による微生物群集の特定や,その微生物群集を培養し,代謝様式を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入において,想定されたよりも安価に購入することができたため.
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次年度使用額の使用計画 |
分析に必要な消耗品の購入や調査・学会発表等の旅費として使用する.また,最終年度であるため,論文投稿・英文校閲に充てる予定である.
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