本研究では、「四肢動物の水から陸への移行が進化のどの段階で起こり、その過程でどのような力学的制約のもと頭骨のモデルチェンジが起きたのか」をテーマとして、脊椎動物の頭骨形態の多様化について力学的側面から定量的に評価する事を目的としている。 今年度の主な実績として以下の4点が挙げられる。 1 本研究のアウトラインとなる「四肢動物の進化に伴い、口腔を覆う口蓋歯の配列とその機能がどのように変化し、各系統で消失したのか」をテーマとした論文が国際誌に掲載された。この研究成果により、化石では保存されない舌などの軟組織の進化と口蓋歯の配列が密接に関連している可能性を示唆した。 2 昨年度、新たに習得した手法を用いて、軟組織の三次元データを取得し、立体構築を行った。本研究のテーマの1つである両生類の頭骨は、骨化しない部位が多く含まれているため、軟組織の三次元データは研究の質を向上させる重要なものである。これと実際の解剖データと併せて、両生類の顎及び咽頭の比較解剖論文を国際誌に投稿する予定であり、現在執筆中である。 3 本研究の総括となる頭骨の力学解析については、前述した軟組織の三次元形状を含めた解析をする予定であり、現在データの整理を行っている。これが終わり次第、より詳細な解析を行う。 4 複数のオオサンショウウオの頭骨標本を作製した。これをもとに成長段階に伴う縫合様式や頭骨形態の変化、サイズ変化に伴う頭骨の力学的適応を考察する予定である。
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