首長竜類の生態進化を明らかにするために、平成28年度に行った<1.研究作業>と、その結果得られた<2.研究成果>を以下に示す。 <1. 平成28年度に行った作業> A)平成26・27年度に作成していない首長竜・現生動物標本の薄片作成 B)平成26・27年度に撮影していない首長竜・現生動物標本のCT撮影 C) 本研究で用いた未記載標本の記載研究の完成 D)CT撮影と薄片検鏡によって得られた骨の内部組織学データのすべてを分析し終え、まとめた E)本成果の一部の研究発表を1件(日本・古生物学者学会)F)研究成果の論文作成・投稿 <2. 平成28年度の研究によって、得られた成果> A)本研究で用いた標本の中に入っていた、北海道から産出した未記載種の標本を記載した結果、日本ではまだあまり報告例がないポリコティルス科の首長竜化石であることが明らかになった B)薄片・CT画像観察によって、首長竜は系統進化とともに、その脊椎の内部構造が変化することが明らかになった C)派生的な首長竜類は淡水域にも進出していた可能性が高いことが明らかになった。D)本研究を進める過程で香川県初の恐竜化石を見出すことができた。 以上の結果から、首長竜類は、現在生きている爬虫類とは異なり、現在のクジラや鰭脚類などの大型海生哺乳類のような生態をもっていた可能性が高く、その生息域も淡水域から海洋域まで幅広かったことを指摘できた。一方、哺乳類を含めたほかの水棲動物と異なり、水棲適応の特徴が骨内部の顕著に表れる部位は、四肢骨ではなく、脊椎であることがわかった。これは、首長竜類の独特な体形に関連してものと考えられる。
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