研究課題/領域番号 |
26800271
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池端 慶 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70622017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自然銅 / 熱水鉱物 / 銅同位体比 / 火山岩 |
研究実績の概要 |
日本国内に分布する、過去の海洋性マフィック火山岩中に自然銅を確認し、試料を採集した。試料の薄片、マウント厚片を作成した後、詳細な顕微鏡観察、電子線マイクロアナライザー(EPMA)分析を行った。その結果、この自然銅は、方解石等の熱水性鉱物に含有されることが判明し、斑晶や石基鉱物中には含有されないことから、マグマから直接晶出するタイプの自然銅ではなく、熱水から直接晶出する、熱水性自然銅であることが明らかになった。自然銅の周辺にはマラカイト等の銅の二次鉱物はみられなかった。
熱水性鉱物に含まれる、微細なフルイドインクルージョンの均質化温度の測定結果や、熱水性鉱物の鉱物組み合わせの結果から、この熱水性自然銅は、百数十度の温度の熱水から晶出したことが示唆された。EPMAにより分析した自然銅の化学組成は、Cu=ca.100wt.%と極めて純粋な組成であり、硫黄はEPMAの検出限界以下であった。自然銅を産出する海洋性マフィック火山岩中には、黄銅鉱等の銅硫化鉱物や、磁硫鉄鉱、黄鉄鉱等の硫化鉱物は含まれない。以上の結果から、この熱水性自然銅は、硫黄に乏しい、還元的な熱水環境下で晶出したことが明らかになった。
次年度は、この熱水性自然銅の銅同位体比をレーザーアブレーション装置とMC-ICP-MS装置とを組み合わせて測定する計画であるが、その前準備として、世界で最も有名な熱水性自然銅の産地である米国ミシガン州キウィーナウ半島で採集した自然銅の銅同位体比を測定した。その結果、熱水性自然銅の同位体比は、マグマ性自然銅、二次性自然銅とは異なることが明らかになり、銅同位体比により、自然銅の成因を識別することが可能であることを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、熱水性自然銅を含有する海洋性マフィック火山岩を採集し、詳細な記載、基本的な化学組成分析を行った。その結果、本熱水性自然銅は、百数十度の硫黄に乏しい、還元的な熱水環境下で晶出したことが明らかになった。また次年度に行う、銅同位体比の 前準備として、米国ミシガン州キウィーナウ半島で採集した熱水性自然銅等の分析も行い、銅同位体比は自然銅の成因を識別する有用な指標となることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
海洋性マフィック火山岩に含有される熱水性自然銅のマウント鏡面研磨厚片を多数作成し、それらの銅同位体比をレーザーアブレーション装置とMC-ICP-MS装置とを組み合わせて測定する計画である。自然銅の形状や自然銅を含有する熱水鉱物の違いにより、銅同位体比に差異があるか確認する。米国ミシガン州キウィーナウ半島で採集した熱水性自然銅の分析数はまだ少ないため、同様の観点で同位体分析を行う予定である。これらの結果から、自然銅が晶出した環境や銅元素の挙動に関してより詳細な情報が得られることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より、短期間の野外調査で海洋性マフィック岩中に産する熱水性自然銅の採集を行うことができたため、その調査にあてる予定の旅費が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
熱水性自然銅の銅同位体比は、京都大学に設置されているレーザーアブレーション装置とMC-ICP-MS装置とを組み合わせて測定する計画である。その前処理は、筑波大学のクリーンルームで実施する計画であるが、耐震工事に伴い、このクリーンルームは半年以上使用することができない。そのため、この前処理も、最も効率よく行うことのできると考えられる京都大学のクリーンルームで実施する計画であり、前年度の未使用研究費は、この旅費にあてる計画である。また、本自然銅は微細であるため、上記の局所分析法でも精度・確度の良いデータを得ることのできる粒子の数が限られる可能性がある、その場合は、追加で試料を採集するための旅費にあてる予定である。
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