研究課題
日本国内の付加体火山岩には中性-アルカリ性の熱水活動に特徴的な熱水鉱物(方解石等)に伴って自然銅が散在していることが明らかになった。熱水鉱物や母岩の火山岩には、硫化鉱物や硫酸塩鉱物がみられないことから、これらの自然銅は、硫黄に乏しい中性-アルカリ性の熱水から、還元的な環境で晶出したことが明らかとなった。EPMAによる化学組成分析を行った結果、自然銅と自然銅を伴う熱水鉱物は試料全体を通して均質な組成を示すことから、自然銅を晶出させた熱水は均質な組成であった可能性が高い。また、方解石に捕獲された流体包有物の均質化温度と塩濃度の測定では、自然銅を晶出させた熱水が、およそ130-180℃(1-4wt.%, NaCl)であったことが分かった。これらの自然銅の産状や鉱物化学組成は,米国ミシガン州に産出する熱水性自然銅の産状や化学組成に類似している。今まで、熱水性自然銅の母岩は、世界的にソレアイト質玄武岩、島弧玄武岩のみが知られていたが、千葉県の房総半島嶺岡帯に露出する、海山起源のアルカリ玄武岩の中から発見した熱水性自然銅は、世界で初めての海洋性アルカリ玄武岩からの産出であることが明らかになった(Ikehata et al., 2016)。付加体火山岩中と米国ミシガン州の熱水性自然銅の銅同位体比は、MC-ICP-MSによる分析の結果、比較的均質な同位体比をもつ母岩の火山岩よりもわずかに高い値を示した。しかし、蛇紋岩化作用や二次富化作用により、初成銅硫化鉱物から形成される自然銅のもつ銅同位体比とは明らかに異なることが分かった。したがって、火山岩中の熱水性自然銅は、主に母岩起源の銅が比較的低温の熱水活動に関連して濃集し、形成されたことを示唆する(Ikehata et al., 2014, 2015)。
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