研究実績の概要 |
本研究では、45億年から近過去(<2 Ma)までの様々な時代情報を保持する火星隕石に含まれる水の水素同位体比を求め、得られた水素同位体比の時代変化から火星の表層水の総量および状態(液体水・氷・水蒸気)の変遷を明らかにすることを目的とする。 研究計画1:平成26年度においては,41億年の形成年代を持つ火星隕石(ALH 84001)に含まれる炭酸塩の解析を行った。鉱物・岩石記載および主成分元素組成の同定は,走査型電子顕微鏡(Hitachi S-3400N,東工大)を用いた。二次イオン質量分析計(Cameca NanoSims 50L,カーネギー研究所)を用いた水素同位体分析に関しては,平成27年度前期に予定している。水素同位体分析に先立ち,本年度は炭酸塩の炭素・酸素同位体を行った。 研究計画2:火星隕石から得られた水素同位体データを入力パラメターとする水散逸モデルを用い,表層水の総量の変遷を見積もった。結果,火星の初期水量の半分以上が火星誕生後4億年間で宇宙空間へ流出したことを明らかにした。 研究計画3:表層水に加え,地下氷を考慮に入れた水散逸モデルを構築した。結果,現在確認されている量を遥かに上回る大量の氷が火星の地下に存在する可能性を示した。 業績:本科学研究費に関連した平成26年度の研究実績として,査読付き原著論文3本(Usui et al. 2015, Kurokawa et al. 2014, Usui and Miyamoto, 2014),2つの招待講演を含む5回の学会発表を行った。
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