我々は,火星誕生から約4億年の間に火星表層の初期水量の50%以上が大気を通じて宇宙空間へ流出し、また残りの水の大部分は火星の気候変動により氷となって現在でも火星の地下に存在する可能性があることを突き止めた。水が大気を通じて宇宙空間に流出した場合、残存する水の水素同位体比の変化としてその履歴が残ることに着目し、火星隕石に含まれる水の高精度水素同位体分析データを用いた理論計算によって水が失われた時期や量を明らかにした。火星が水を失った歴史を突き止めたことは、今後の火星探査計画への示唆や、地球型惑星が生命誕生にとって重要な海を持つ条件の理解につながると期待される。
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