研究課題
地震波観測により得られる内核及び外核の内部の密度分布は、弾性波速度分布と共に、核の化学組成を制約する上での数少ない情報の一つである。地震波観測から得られた内核と外核の密度分布や、内核-外核境界の密度不連続と比較し、核に含まれる軽元素の種類と量に制約を与えるうえで、核の構成物質の候補と考えられる鉄-ニッケル-軽元素合金の、核の圧力・温度条件下における密度データは必要不可欠である。本研究ではレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルと放射光X線を用いた、鉄-軽元素合金の高圧実験を行い、固体及び液体鉄-軽元素合金の密度及び弾性波速度を決定した。まず、固体に関しては鉄-系元素合金のX線回折測定から地球中心の温度-圧力領域までの結晶構造、密度、及び結晶構造変化を決定した。この研究結果に関しては、国際誌において発表した。また液体鉄に関する実験を行った。これまで、液体の鉄合金の高圧下での実験例は非常に少ない。そこで、本研究は、まず純鉄において実験を行った。放射光施設Spring-8にてレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル及び放射光X線により液体純鉄のX線散乱を測定し、その密度を決定した。また、X線非弾性散乱測定も行い、音速を決定した。加えて、種々の軽元素を含む鉄-軽元素合金に関しても同種の実験を行った。
2: おおむね順調に進展している
これまで、地球中心核圧力条件における、液体鉄合金の実験例は非常に限られており、Fe-S合金及びFe-Si合金の限られた組成に関する研究しか現在のところ報告されていない。特に液体純鉄に関する研究例はこれまでのところない。これは、体からのX線散乱シグナルは固体に比べて非常に弱いため、解析に必要な強度のデータを取得するには十分な時間液体状態を保持することが必要であるが、純鉄の融点は合金のそれよりも高く、十分な質のデータを取得することが困難なためであった。本研究では、レーザー加熱光学系を改良するとともに、断熱材の配置などを工夫し、また短時間でデータが取得できるよう測定系も改良することにより、高圧下での液体純鉄のX線散乱シグナルの取得に成功し、また、解析手法を改良することにより、確度の高い密度決定を行った。また、これにより改良したレーザー加熱システムの仕様を非弾性散乱測定に組み込むことにより、音速の測定も可能にした。また、固体に関しては、Fe-Si合金に関して地球中心までをカバーするデータの取得に成功した。このように、当初の計画通り順調に進展している。
本年度も、昨年度同様、引き続き液体鉄合金のX線回折データの測定と非弾性散乱測定を行う。液体純鉄に関しては現在80万気圧までのデータの取得に成功している。本年度は、より高圧での実験を行い、地球の外核条件での実験を行う。また、測定データから密度を導くための手法の改良を行った。同様の研究を行っている研究者と議論を重ね、より確度の高い密度決定を行う。また、これまで測定結果の報告されていない液体純鉄の被弾線散乱測定も行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Nature
巻: 534 ページ: 95-98
10.1038/nature17957
Nature Commun.
巻: 6 ページ: 8942
10.1038/NCOMMS9942