研究課題
地球の中心を構成する核に関して直接得ることのできる観測値は、地震波観測により得られた核の密度および弾性波速度分布のみである。地球の内核および外核は、軽元素と呼ばれる水素・炭素・酸素・珪素・硫黄のうちの一つないしは複数の元素をわずかに含む固体及び液体の鉄-ニッケル合金であると考えられている。したがって、地球の核の組成を見積もり、核の形成過程や現在のダイナミクスを議論するうえで、地球の核に相当するような高圧高温下での、核を構成する候補物質である液体及び固体の鉄合金の密度および弾性波速度測定は核の物質科学にとって本質的に重要である。特に液体金属でできている外核の組成を議論するうえで、その主成分である液体純鉄の密度および弾性波速度の情報は必要不可欠であるが、これまで、その実験的困難さから、高圧での液体鉄の実験はほぼ衝撃圧縮実験によるものに限られていた。衝撃圧縮実験は静圧縮実験に比べて高圧まで実験が可能であるという利点はあるが、一方で地球の核の条件と比較するうえで重要なパラメータを温度は比熱を仮定することによって得られており、直接温度を決定することはできないという重大な問題を含んでいる。本研究では、高圧下の任意の温度での液体鉄の密度および弾性波速度を測定するためにレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルを用いた静圧縮実験手法を開発し、放射光におけるX線回折測定およびX線非弾性散乱測定により、高圧・高温下における密度、弾性波速度の測定に成功した。静的圧縮により液体純鉄の密度および弾性波速度を測定した例は、これまで例がなく、本研究により得られた核の組成を議論するうえでの非常に重要なリファレンスとなる。
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Physics and Chemistry of Minerals
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s00269-017-0871-8
Nature
巻: 534 ページ: 95-98
10.1038/nature17957