研究課題/領域番号 |
26800277
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮原 正明 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90400241)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シリカ / 月 / 隕石 / インパクト |
研究実績の概要 |
平成26年度の研究計画は,月表層試料の入手と衝撃溶融組織に含まれる高圧相の記載・分類を行い,衝撃圧力とその天体が衝突した時の速度を決定することである。月表層試料としては玄武岩質の月起源隕石であるNWA 032, NWA 2977,NWA 2727を入手した。また,玄武岩質なものとシリカの産状を対比するために少量の斜長岩質角礫岩の月起源隕石,NWA 4881及びNWA 5000も入手した。 全ての試料は岩石薄片或は表面研磨を施し,偏光顕微鏡による母岩組織及び衝撃溶融組織(衝撃溶融脈,メルトポケット,斜長石のガラス化など)を観察・撮影した。その後,高分解能の走査型電子顕微鏡で衝撃溶融脈とメルトポケットを中心に観察し,構成鉱物や高圧相の組織観察を行った。これらの鉱物の化学組成を電子線プローブ微小分析装置で測定した。高圧相の相同定はラマン分光装置を利用した。 その結果,NWA 032, NWA 2977及びNWA 2727ではいずれも強い衝撃変成により斜長石がガラス化しており,衝撃変成に伴い岩石の一部が高温で溶融した組織である衝撃溶融脈及びメルトポケットが確認された。この内,NWA 032とNWA 2727には多くのシリカが含まれており,その高圧相,コーザイトが見出された。一方,NWA 2977ではカンラン石の高圧相,リングウッダイトが同定された。リングウッダイトの存在から,NWA 2977に記録された衝撃圧力は15ギガパスカル程度と見積もった。 なお,別途入手していたアポロ15号の試料からはシリカ高圧相のスティショバイトが見出された。衝撃圧力は8ギガパスカル以上,月の表側で起きたインパクトに関連すると結論付けた。この結果は早急に公開する必要があり,米国の鉱物科学雑誌にレターとして投稿し受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
他にも玄武岩質月起源試料を借用申請しており,認可が遅れているものの,借用申請が承認され次第27年度に衝撃溶融組織と高圧相の記載・分類をする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
NWA 032とNWA 2727については,微小の未知のシリカ高圧相が存在する可能性があり,引き続き強力なX線を用いて相同定を行う予定である。 本課題ではシリカ高圧相を衝撃変成のスケールとして扱う計画であるが,NWA 2977ではカンラン石の高圧相が見出されている。カンラン石の高圧相も衝撃変成のスケールとして扱えるため,NWA 2977ではカンラン石の高圧相に基づく衝撃変成のスケールの制約を行う。 上記の2点以外は当初の研究計画通りに進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費で購入した隕石試料の一つが予想以上の成果を上げており,他の試料の購入を控え,現在のこの隕石試料の研究に専念したため予想使用額を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は全ての隕石試料において学外施設での電子顕微鏡実験が主体となる為,その消耗品や共同利用施設への交通費として物品費と旅費を使用する予定である。
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