研究課題/領域番号 |
26800279
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川面 洋平 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (80725375)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 相対論的プラズマ / 傾圧効果 / 拡張電磁流体力学 / 最小作用原理 / Clebschポテンシャル |
研究実績の概要 |
本研究では実験室・宇宙両局面において相対論的傾圧効果が渦・磁場生成にどのように働いているかを理論的に明らかにすることを目指している.前年度における高強度レーザー実験に妥当なパラメータ領域での数値計算によって,実験室系において準中性条件の破綻により生じた電場により相対論的傾圧効果が減衰し,従来知られていた熱的傾圧効果と同程度になってしまうことがわかっていた.そこで本年度は準中性条件が成立する宇宙プラズマに妥当なモデルについて理論計算を行なった.
今回対象としたのは二流体効果を含んだ相対論的拡張電磁流体方程式(RXMHD)である.従来宇宙プラズマで用いられてきた相対論的理想MHDでは相対論的傾圧効果による磁場生成が生じないため,拡張された電磁流体モデルを用いる.
RXMHDの数学的構造を明らかにするために,RXMHDの作用原理による定式化を行なった.定式化の上で鍵となったのはイオンと電子それぞれの四元速度のノルムが1になるという拘束条件の導入である.従来の相対論的中性流体の作用原理と同様に2つの速度ノルム条件を作用に取り込んで計算を行うとLagrange未定乗数が定まらないという問題が生じた.そこで速度ノルム条件を,変分を計算した後に用いるという手法を用いてこの問題を解決した.変分原理により,一般化された四元運動量密度と四元ベクトルポテンシャルのClebschポテンシャル表示が得られた.また位相空間変数をClebschポテンシャルから密度,運動量,エントロピー密度,Faradayテンソルといった物理的変数に変数変換することでRXMHDの共変ポアソン括弧を得た.RXMHDは相対論・非相対論的なHall MHD,電子慣性MHD,理想MHDを含むため,本研究で示した作用原理に適切な簡約化を行うことで,これらの簡約化モデルを全て導出することができる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではRXMHDの最小作用原理による定式化を行なった.イオン・電子それぞれの四元速度ノルム条件,密度保存,エントロピー保存,Lagrangeラベル保存を適切に組み込むことで正しい運動方程式が導出される.また変数変換によって得られた共変ポアソン括弧を用いた作用原理も正しい運動方程式を与える.この条件付き最小作用原理から共変ポアソン括弧による作用原理を変数変換によって導く手法は本研究で初めて提唱されている.またRXMDは他の電磁流体モデルを包含しているので,今回得た作用原理は電磁流体モデルの統一理論とみなすことができる.現在これらの結果の投稿論文を準備中である.
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きRXMHDの理論解析を行う.具体的には相対論的理想MHDで用いられる磁場likeな四元ベクトルをRXMHDで定式化できるか検討する.RXMHDでは磁場を運ぶ流れ場が二流体の組み合わせになり,またOhmの法則に傾圧効果が入るため,磁場likeな四元ベクトルの定式化は極めて困難な課題となることが予想される.また今年度定式化したEuler変数による作用原理に加えて,Lagrange変数を用いた作用原理を定式化することを目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
国際学会申込日までに当初予定していた進捗に至らず,参加を見送ったため.
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度は共同研究者との議論及び国際学会参加のための旅費に使用する.
|