本年は昨年に引き続き相対論的電磁流体力学(MHD)にHall効果や電子慣性を加えた相対論的拡張MHDの解析を行った.まず最小作用の原理に関する考察を行った.この作用原理は運動量とベクトルポテンシャルのClebsch表示を導く束縛付き作用原理から始まり,Clebschポテンシャル変数を通常のベクトル場変数に変数変換することで共変ポアソン括弧作用原理となる.この作用原理はこれまで提案されていた電磁流体タイプのモデルを包括している.この作用原理から導出した相対論的Hall MHDは非相対論的Hall MHDと異なり,電子の熱的慣性を含んでおり,イオンのスキン長程度のスケールをもった無衝突磁気リコネクションを起こしうることを発見した.以上の結果を論文で出版した.次に相対論的Hall MHDの線形波動解析を行った.相対論的Hall MHDの分散関係は非相対論的Hall MHDより複雑になり,複数の興味深い性質が現れることが分かった.まず背景磁場に関して等方的になることである.非相対論的Hall MHDではHall効果が強くなるほど,速い磁気音波の磁力線に対して平行方向の位相速度・群速度が増大することにより非等方になることが知られていた.一方相対論的Hall MHDでは光速限界があるために早い磁気音波が平行方向にある程度以上速くなれず,相対的に等方化することが分かった.また,光速限界に達した速い磁気音波にシアAlfven波が追いつくことで,速い磁気音波とシアAlfven波の群速度面が融合する.この結果シアAlfven波もまた等方化される.さらに,波の圧縮性を解析したところ,速い磁気音波は非相対論的Hall MHDではHall効果の増大に伴い非圧縮的になるのに対し,相対論的Hall MHDではHall効果が大きくなるとより圧縮的になることが分かった.以上の結果を論文にまとめ投稿した.
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