研究課題/領域番号 |
26800282
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
大石 鉄太郎 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80442523)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 不純物輸送 / 低価数タングステン / 真空紫外分光 / ITER / 周辺プラズマ |
研究実績の概要 |
核融合プラズマの対向材として金属タングステンを用いる場合,プラズマ中にタングステン不純物イオンが蓄積することが問題となる.これまでのタングステン不純物計測は,金属表面から放出される中性原子とコアプラズマに蓄積する高電離イオンに限られていた.本研究では,その間をつなぐ「周辺プラズマでの低電離タングステンイオン」の計測方法を確立する.具体的には,核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDで真空紫外分光を用いて,低電離タングステンイオンの発光波長同定と空間分布計測を行う.平成26年度は,LHD装置のプラズマに金属タングステンの小片をペレットとして入射し,ペレット溶発時に放射されるタングステンイオンの発光を3m直入射真空紫外分光器を用いて計測した.500-2200オングストロームの波長領域において低電離タングステンイオンの発光波長同定を試みたところ,5価タングステンイオンの発光であり605.93,639.66,677.72,1168.15オングストロームにピークを持つ線スペクトルが観測された.これは核融合プラズマ実験における初めての低価数タングステンイオンの線スペクトル観測例である.これらの線スペクトルは発光強度が大きく他の不純物ラインとの重畳が無いため,今後空間分布や経時変化を計測する際に活用できる.スペクトルのドップラー拡がりから求めたイオン温度は5価タングステンイオンのイオン化ポテンシャル65eVと同程度の値を示しており,価数同定と矛盾しない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温プラズマへのタングステン不純物導入,真空紫外分光によるタングステンイオン発光の計測,計測に有用な低価数タングステン線スペクトルの発見と,研究の各段階において当初期待していたとおり成果が出ているため,おおむね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
観測条件を最適化し,26年度に波長同定したラインの空間分布を計測する.真空紫外領域の全タングステンスペクトルと一部のスペクトル発光強度空間分布の計測結果を用いて,低電離タングステンイオンからの放射損失量を解析する.申請者の研究グループでは,60.9オングストロームにピークを持つ44価の高電離タングステンイオンのスペクトル線を極端紫外分光で計測して放射量を同定し,平均イオンモデルなどの数値モデルを用いてタングステン全放射量を推定してきた.今後さらに低電離タングステンイオンの放射量をモデルに取り込み,タングステンイオンからの全放射量推定の制度を向上させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも現有設備を有効活用できたため,物品費支出が少なくなり次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
27年度には,初年度で決定したスペクトルをより明るく観測するために光学系を最適化し,検出効率の向上を図る.紫外光用アルミ平面ミラーや較正用スペクトルランプなどの光学機器購入費,複数種の炭素樹脂を母材としたペレットの製作費,ガスケット他真空部品とケーブル・コネクタ他電子部品の購入費を物品費として計画している.研究成果は国際学会および国内学会で発表し,論文化する.
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