研究課題
核融合科学研究所の大型ヘリカル装置LHDに金属タングステンの小片をペレットとして入射し,ペレット溶発時に放射されるタングステンイオンの発光を計測したデータを解析した.タングステンイオンの発光は高波長分散の3m直入射真空紫外分光器によって計測され,5価タングステンイオンの605.926(5d-6p),639.683(5d-6p),677.722(5d-6p),1168.151(6s-6p),1467.959(6s-6p)オングストロームにピークを持つ線スペクトルは強度が大きく他の不純物線スペクトルから独立して観測された.そのためこれらの線スペクトルは,プラズマ対向材料としてタングステンを用いるITERなどの実験装置において低価数タングステンスペクトルの分光計測を行う上で有用であることが明らかになった.特に639.683オングストロームの一次光と二次光,および677.722オングストロームの一次光は低分散の20cm直入射真空紫外分光器によっても明確に観測されたため,これらの線スペクトルを用いてLHDにおける5価タングステンイオンのルーチンモニター計測を確立した.上記の真空紫外分光計測を,可視分光による中性タングステン原子(4009オングストローム)の観測,及び極端紫外分光による24価(32.3オングストローム),25価(30.9オングストローム),26価(29.6オングストローム),41価(131.2オングストローム),42価(129.4オングストローム),43価(126.3オングストローム),45価(127.0オングストローム)タングステンイオンの観測と同時に行った.その結果,プラズマ中に分布するタングステンの価数が,プラズマの電子温度上昇とともにイオン価ポテンシャルが低い低価数のイオンからイオン価ポテンシャルが高い高価数のイオンに変化する様子を観測できた.
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