研究課題/領域番号 |
26810010
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
湯澤 勇人 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 特別研究員 (30636212)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軟X線分光 / クロスカップリング / 反応中間体 |
研究実績の概要 |
クロスカップリング反応は様々な材料を合成するための非常に重要な有機合成反応である.本反応の反応機構は反応実験および量子化学計算から得られた知見による提案が多く,分光学的手法により直接反応中間体を検出して議論されることは少ない.そこで本研究では元素選択的に局所電子構造を観察できる軟X線吸収分光を用いることで液相におけるクロスカップリング反応が進行する様子を実際の反応条件下で直接観測することを目的としている. 本年度は様々な吸収端の測定を行うことで観察を行うクロスカップリング反応系の探索を行った.実験は,種々のボロン酸,臭化物にPd錯体触媒を溶解させUVSORの軟X線ビームラインBL3Uにて透過法による軟X線吸収分光測定を行った.また,別にオフラインで反応条件の検討をするために,反応装置の準備を行い完了させた. 様々な系で検討した結果,測定条件の最適化により炭素のK吸収端測定を行うことはできたが,反応中間体を測定するために重要なホウ素の吸収端およびパラジウムの吸収端における吸収を確認することができなかった.種々の検討の結果,原因は1軟X線吸収分光用の液体セルの膜(SiNまたはSiC製)が目的のエネルギー領域における軟X線を吸収し妨害している点,および2高次光が目的の吸収による変化の検出を阻害している点,の二点が重大な影響をおよぼしている事が分かった.そのため現在,この二点の問題を解決するために有機薄膜を用いた薄膜による液体セルの作成や現在高次光を除くフィルターの検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り反応溶液の軟X線吸収分光測定を行った結果,条件の最適化によって炭素のK吸収端の測定は可能なことは分かったが,本研究目的の達成に重要な他の吸収端の測定が液体セルや高次光の影響により困難であり,その対策に多くの時間を割いたため当初の予定よりも少し遅れ気味である.ただし,平成26年度の検討により測定の問題をおよそ洗い出すことができたので,順調に研究が進めば27年度で遅れを取り戻せるものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の検討によって測定における問題点をほぼ洗い出すことが出来た.そこで26年度の後半より種々の高次光フィルターの調査や,現在と異なる材料で作成された膜による軟X線分光用液体セルを検討するなど次のビームタイムまでに問題の対策を進めているところである.これにより測定にかかる問題は解消されると考えているのでビームラインにてこれらの条件が整い次第,種々の反応条件において軟X線吸収分光測定を行い,中間体の検出を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した反応装置に必要な部品が,値引きにより想定した額よりも安く購入できたため.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究の結果を見て,新たに必要と判断した試薬がいくつかあるので,その購入費に充てる.
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