研究課題/領域番号 |
26810011
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
水瀬 賢太 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (70613157)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フェムト秒化学 / クラスター化学 / 画像観測 / 分子間相互作用 / 分子ダイナミクス / 水素結合 / 装置開発 |
研究実績の概要 |
本研究は、水和クラスターの中での低エネルギー領域ダイナミクスを分子レベルで観測することを目的としている。本研究の目的のためには、1)目的のダイナミクスを選択的に励起する振動コヒーレント励起法、および2)励起したダイナミクスを観測するために、既存の装置を凌駕する性能の時間分解光イオン・光電子画像観測装置を開発する必要がある。 今年度の研究では、既存の画像観測装置を見直し、測定原理から新たなものを考案した。独自に着想した空間断層化イメージングの手法を実現するための装置を、分子科学研究所装置開発室の協力により、立ち上げることができた。本装置では、既存の手法では観測できなかった分子運動の微細構造まで明瞭に可視化することができる。実際に、本装置を、過去の低分解能測定で研究されていた分子波束ダイナミクスのベンチマーク系に適用し、これまで見られなかった波束のnode構造をすべて観測することに成功した。観測結果からは、既存の装置の10倍程度の高分解能化ができていると推定された。明瞭な観測は、分子の超高速ダイナミクスに関するより深い理解につながるとともに、さらなる光操作によって選択的に分子運動を誘起するための基盤情報を与えるものである。初年度は装置立ち上げに多くの時間を費やしたため、今後は本研究の最終目標であるクラスター種への適用を行い、観測と制御の相互フィードバックによる、動的挙動に関する考察を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2年計画であり、その期間の多くを費やす予定だった画像観測装置の設計開発について、分子科学研究所装置開発室の協力により、想定よりもスムーズに進んだ。 所属機関の変更にともなう実験設備の停止期間があったため、分子クラスターについての光制御については遅れがみられるが、総合的にはおおむね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
すでに必要な装置の大枠はできあがっているため、今後は分子クラスター実験への装置最適化を行い、速やかにダイナミクス制御実験を開始する。実験停止(引越)期間中を利用し、すでに光学系のデザインを済ませている。光制御のために想定していたパルスタイミングの最適化に加え、偏光制御のパラメータを用いることで選択的・効率的なダイナミクス励起、および明瞭な観測を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
画像観測装置に関して、市販品の真空部品を利用する予定だったが、適当な性能の製品では時間とコスト面から考えて導入が困難なことが分かった。必要なものを製作することとしたところ、本年度は製品を購入するほどの費用がかからなかったため、次年度使用額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように自作した部品は、実験に応じて最適化していく必要がある。発生金額は、その際の機械部品費用、加工費用として使用する。
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