研究課題
本研究では、水素結合が室温程度のエネルギーで解離し、組み換えや再生成するダイナミクスを直接的に制御、観測し、水素結合ダイナミクスの分子論的描像を築きあげることを目的としている。ダイナミクスの明瞭な観測のため、気相中の分子クラスターを対象とし、超短パルスレーザーによる分子間振動のコヒーレント励起実験を行った。また、多自由度系である分子クラスターのダイナミクスを直接可視化する手法の開発自体に取り組んだ。まず、超音速ジェット法で生成させた分子クラスターは有限の内部エネルギーを持ち、始状態のランダムさがその後のダイナミクス誘起に影響しうる。そこで、ナノ秒レーザー分光によって、振動回転の初期状態の評価を行った。その上で、フェムト秒パルスを照射し、低振動ダイナミクスを誘起した。運動誘起によってナノ秒光源によるスペクトルは大きく変化したが、ブルード化か顕著であり、ダイナミクスの詳細には踏み込めなかった。そこで本研究では、誘起した運動を視覚的に理解するために、独自の断層化技術を組み込んだ光イオン画像観測装置を開発した。開発した装置では、これまで観測できなかった微弱な分子クラスター由来の信号が強く観測され、構造ダイナミクス研究への応用が期待できることが分かった。実際に分子クラスターのダイナミクス観測に応用したところ、フェムト秒スケールの周期信号と、100ピコ秒程度の周期信号を観測した。このことから、振動と回転のダイナミクスがどちらも観測できており、その時間周期に関する情報を得ることに成功したといえる。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Sci. Adv.
巻: 1 ページ: e1400185
10.1126/sciadv.1400185
Phys. Chem. Chem. Phys.
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http://www.chemistry.titech.ac.jp/~ohshima/