研究課題
本研究計画における鍵となる化合物「ポルフィリン架橋テトラチアフルバレン分子(TTFP)」を用いて、そのジカチオン酸化種(TTFP2+)と、テトラアニオン性ポルフィリン分子とのイオン対型超分子複合体の生成を同定し、その光励起電荷分離状態が極めて長寿秒化することを明らかとした。ジカチオン種(TTFP2+)とテトラスルホン酸ポルフィリン分子との2:1複合錯体の光励起によって、アニオン性ポルフィリンからTTFP2+への電子移動が生じ、三重項電荷分離状態を与え、この超分子錯体中の電荷分離の寿命が83ミリ秒(室温、ベンゾニトリル溶液中)と極めて長寿命であることが明らかとなった。このようなTTF/ポルフィリンを基盤とする超分子複合系の電子移動化学はこれまであまり例が少なく、超分子複合系電子移動システムを構築する学問的意義は極めて大きい。また、本研究計画には多様な非定常電子構造を有するポルフィリン骨格の創製および詳細な電子構造解析が必須であり、二電子還元種に相当する”フロリン”や”イソフロリン”といった非芳香族性のポルフィリン誘導体や環状π共役骨格にピリジン環を導入したハイブリッドシクロピロール類縁体の合成と構造同定に成功した。
2: おおむね順調に進展している
有機エレクトロニクス材料開発において重要課題である、π電子系化合物の光励起ダイナミクスに関して有益な知見を得た。テトラチアフルバレンとポルフィリン骨格とのハイブリッド分子の修飾方法によって異なる光・電子物性を明らかとすることが出来た。特に超分子的なアプローチによって光電荷分離状態をミリ秒オーダーまで長寿命化に成功し、新たなTTF修飾されたπ共役分子の設計指針となった。以上のように、平成26年度は超分子化学的戦略に基づくドナー・アクセプタ―複合体の開発に有益な、新しい知見を得ることができ、2年間の採択期間の初年度として十分な成果を得るに至った。
平成26年度の研究成果をもとに、計画調書に従って、さらにπ拡張されたポルフィリン渡環TTF誘導体の合成を行う。具体的なコア骨格としては、環拡張ポルフィリンの一つであるヘキサフィリン分子で渡環された拡張TTF類縁体を標的分子とする。このキノイド型ヘキサフィリンの電子構造の同定を行い、分光および酸化還元特性についての構造相関を調査する。これら知見を基に、超分子ドナー・アクセプタ―分子システムへの応用を検討する。同時に理論計算手法を駆使して、有機エレクトロニクス材料開発に向けた設計指針を得る。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 1件)
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