研究実績の概要 |
平成27年度は研究計画の残り半分に相当する“ガス雰囲気下における磁気物性の検討”のためまず,1)カンタムデザイン社製磁気特性測定装置(MPMS)で用いるプローブの設計・作製を行った.その上で,これまでの物質設計をさらに進め,2)より高い電子供与性を持つ[Ru2]ユニットからなるフェナジン一次元鎖を合成し,その物性について検討を行った.さらに,集積体の次元性を拡張し3)[Ru2]ユニットとTCNQからなる,ガス吸着能を示す二次元層状強磁性体を合成し,ガス吸着下における磁気物性についての検討を行った.以下2)の結果について詳述する. 2) 一次元鎖状錯体,[Ru2(2,4,5-Me3PhCO2)4(phenazine)]が,CO2とNOについてのみゲートオープン型吸着を示すことを見いだした.同構造のRh一次元鎖においてはCO2吸着のみが見られた.特に,NOは骨格と強く相互作用しており,吸着温度(121 K)においては高真空下においても取り込まれたNOの完全な脱着は起こらなかった.この状態のサンプルを昇温させていくと,NOの脱着よりも先にNOの[Ru2]ユニットへの配位が起こり,NO付加体,[Ru2(2,4,5-Me3PhCO2)4(NO)2](phenazine)への構造変化が見られた.以上の過程を分光・誘電・磁気測定によるその場観測を行い追跡した.特に磁気測定からは,吸着されたNOの大部分はNO同士でダイマーとなり,磁気シグナルに寄与しないものの,一部のNOとの間にはフレームワークと強い反強磁性的相互作用が働いていることが示唆された.
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