プルシアンブルー(PB)の内部欠陥を制御するために粒子径成長速度の遅い空気酸化法や超音波照射法によってPBを合成した。含水割合が少なく完全結晶体であることが示唆されたが、粒子径が大きく分散液を用いた評価は困難であった。市販の完全結晶型PBと合成した欠陥構造型PBの電気化学的挙動の比較より、内部構造が少ないPBでLiイオンの脱挿入がスムーズに起こることを示した。これは、完全結晶型PBは内部が疎水的であるためと考えられる。さらに類似体(PBA)は、欠陥構造を有していてもLiイオンの吸脱着能を示し、内部構造だけでなく金属種も重要な因子であることを明らかとした。 また、Liイオン二次電池応用のためには、Liイオン含有体の合成が必要である。そこで、フェロシアン酸リチウムを合成した。原子吸光測定やFT-IR測定などの各種測定より目的の物質ができたと考えれる。また、この材料はアルコールに溶解するため、非水環境でのPB合成が可能である。フェロシアン酸リチウムを用いてアルコール中でPBを合成した。 さらに、完全結晶型のイオン含有還元型PBAの合成を試みた。フェロシアン酸ナトリウムと硝酸銅水溶液の混合比を制御することで完全結晶型のイオン含有還元型Cu-PBAの合成に成功した。この材料は一般的な立方体の構造ではなく、ナノシート状の構造を有しており、Liイオンのスムーズな取り込みに有効と考えられる。得られた材料の懸濁液を用いてITO電極上に塗布薄膜を作製し、電気化学応答性を測定した。これまで合成した内部欠陥を有するCu-PBAよりも、非水系溶媒中でのイオン授受がスムーズに起こり、二次電池の活性材として有効である。また、イオンを含んでいることから二次電池の正極材の代替として有力である。
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