研究課題
[研究目的] アンモニア合成、CO水素化、CO2水素化などの不均一触媒では、酸化物の触媒担体は表面積の提供や間接的な電子効果の発現など、脇役的な存在であった。申請者は数年前に、Ti系酸水素化物(H-を有する酸化物)を開発した。Ti系酸水素化物は400-500CでH2, NH3などの解離・分解が可能である。この独自の反応性を活かして、本研究では、水素・窒素などのガス種と直接反応し、従来の酸化物担体と桁違いのスピルオーバー効果を有する触媒を提案する。最終的には、担持金属がゼロであり酸水素化物が直接反応に寄与するアンモニア合成、CO水素化、CO2水素化反応を目標にああらしい触媒系を構築する。[研究成果] 酸水素化物の基礎的な化学性質を求める実験で、いくつか進展があった。水素の交換・脱離のしやすさを比較する手法の開発が重要であったが、水素脱離温度をKissinger-Redhead解析で行うことにより、熱励起の関係を確認し、水素脱離の活性化エネルギーを求めることに成功した。他にも同位体交換(SSITKA)など様々な実験を行ったが、現在の所、この実験・解析法が最もうまくいっている。また、電子供与(すなわち固体塩基性)の定量評価も以前から必要であったが、これに関しては1-buteneの異性化反応で、酸水素化物が酸化物に対して明らかに違う挙動を示したのが確認でき、塩基性評価への糸口が見つかった。CO2水素化反応では、昨年度は副生成物である水による触媒の劣化(酸化)が課題だった。これに対し、表面の疎水化処理、反応温度の調整などでこの影響をある程度回避できることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
酸水素化物の基礎的化学性質を評価する方面で、一定の進展が見られた。
ー新たな触媒反応系の探索では、hydroamination, Fischer-Tropsch反応を検討している。ーアンモニア分解反応を試みる。ー系統的に、酸水素化物中のヒドリドの動きやすさ・交換のしやすさを評価する。
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Journal of the American Chemical Society
巻: 137 ページ: 15315-153211
10.1021/jacs.5b10255