研究課題/領域番号 |
26810035
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
久禮 文章 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (30572557)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | チオラト配位子 / ホスフィン配位子 / 二核錯体 / ニッケル / パラジウム / 白金 / ロジウム / イリジウム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ホスフィン配位子を2つおよびチオラト配位子を2つ有するP2S2型四座配位子を有するモリブデン単核錯体を合成し、これを基盤としてチオラト架橋二核錯体を合成するとともに、それらの水素および窒素との反応性を解明することである。そのための第一段階として、平成26年度は支持配位子であるP2S2型四座配位子の合成法を確立するとともに、それらの様々な金属イオンへの錯形成能を検討した。さらに、得られた単核錯体をビルディングブロックとして二核錯体への骨格拡張および水素に対する反応性に関して検討を行った。具体的には、P2S2型四座配位子H2mepppをmesoおよびracの混合物として二段階で高収率に合成し、塩化ニッケル六水和物、および四塩化パラジウム酸ナトリウム、PtCl2(cod)と反応させた結果、対応する単核錯体[M(meppp)] (M = Ni, Pd, Pt)が得られた。さらにこれらの単核錯体に対してロジウムおよびイリジウム単核錯体[M'(C5Me5)(NO3)2]を反応させると、チオラト架橋異種金属二核錯体[M(mu-meppp)M'(C5Me5)(NO3)]NO3が系統的に高収率で得られた。これらの二核錯体は水素やギ酸イオンを活性化して、対応するヒドリド架橋錯体[M(mu-meppp)(mu-H)M'(C5Me5)]NO3が得られることを見出した。これらヒドリド錯体の構造および反応性は中心金属のルイス酸性度およびイオン半径に依存することを明らかにした。 以上の結果より、P2S2型四座配位子を有するチオラト架橋異種金属二核錯体を合成し、その反応性を検討するための基盤が完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はP2S2型四座配位子を有するチオラト架橋異種金属二核錯体を合成し、その反応性を検討することを目指し、(1)支持配位子であるP2S2型四座配位子の合成法の確立、(2)P2S2型四座配位子を有する単核錯体の合成、(3)単核錯体ビルディングブロックとするチオラト架橋異種金属二核錯体の合成、(4)得られた二核錯体の水素に対する反応性の検討を行った。これらの研究結果から、次年度以降の研究の発展が見込まれるため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年度に得られた研究基盤やノウハウをもとに、チオラト架橋異種金属二核錯体のラインアップを完成させる。中心金属には鉄およびモリブデンを中心に、様々なものを検討する。さらにそれらの錯体を用いて、水素および窒素に対する反応性を検討する。その際の反応性の違いは、中心金属のルイス酸性度やイオン半径の大きさに大きく依存することが予想される。このような反応性の精密な制御は極めて重要な課題であると考えており、さらには水素をを用いた窒素の触媒的な還元反応へと展開することに取り組む。
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