研究実績の概要 |
本研究の目的は、ホスフィン配位子を2つおよびチオラト配位子を2つ有するP2S2型配位子を有する単核錯体を合成し、これを基盤としてチオラト架橋二核錯体を合成するとともに、それらの水素および窒素との反応性を解明することである。平成27年度は前年度に合成方を確立したP2S2型四座配位子を有するニッケル単核錯体をビルディングブロックとして二核錯体への骨格拡張および水素と等価体であるヒドロシランに対する反応性について検討を行った。具体的には、P2S2型四座配位子H2mepppを有するニッケル単核錯体[Ni(meppp)]に対して低原子価ロジウム[Rh(cod)(OH2)2]NO3およびイリジウム単核錯体[Ir(cod)(py)2]PF6を反応させると、チオラト架橋二核錯体[Ni(meppp)M(cod)]PF6 (M = Rh, Ir)が高収率で得られた。これらの錯体は配位子交換反応を経ることで[Ni(meppp)ML2]PF6 (M = Rh, Ir; L = CO, XylNC, P(OPh)3)が系統的に得られた。これらの二核錯体のうち[Ni(meppp)Ir(XylNC)2]PF6 のみが種々の置換基を有するヒドロシランを活性化し、対応するシリルヒドリド錯体[Ni(meppp)(H)M(SiR3)L2]PF6 (SiR3 = SiEt3, SiMePh2, SiMe2Ph, SiPh3)が得られることが分かった。これらシリルヒドリド錯体がカルボニル化合物のヒドロシリル化反応の触媒として有効に機能することを見出した。 以上の結果より、P2S2型四座配位子を有するチオラト架橋異種金属二核錯体を合成し、その反応性を検討した。
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