本研究は、耐塩基性配位高分子内に水酸化物イオンをイオン伝導キャリアとして包摂し、水酸化物イオンの伝導経路を最適化することによって、高いイオン伝導性を有する新規配位高分子を創製し、それらの構造と伝導特性を明らかにすることを目的とする。平成28年度は、水酸化物イオンを配位高分子内に導入するため、配位子交換反応を用いることにより、耐塩基性配位高分子であるZIF-8の側鎖に、ジメチルアミノ基を有する新規配位高分子の合成に成功した。核磁気共鳴スペクトル測定より、最大で20%程度の配位子の側鎖に、ジメチルアミノ基が導入されていることが確認された。放射光X線回折測定を用いたRietveld解析によりその骨格および細孔内の構造を明らかにすることに成功した。また、窒素吸着等温線測定により、試料の多孔性が保持されていることを確認した。アミノ基と水分子の反応により、細孔内に水酸化物イオンが生じていることが予想されたため、加湿下でイオン伝導度測定を行った。いずれの試料においても、相対湿度90%程度の高湿度においても顕著なイオン伝導は見られなかった。これは、ZIF-8の疎水性によって、細孔内への水分子の吸着が抑制されたためであると考えられた。今後は、親水性母骨格を用いることにより、水分子の細孔内への吸着と水酸化物イオンの発生が同時に起こる系を構築することにより、高いイオン伝導性を有する塩基包摂配位高分子の作製が可能になるのではないかと考えられる。
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