研究課題
交付申請時の研究実施計画を当初の予定よりも早く、前年度に達成したため、今年度は、酸素耐性ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼを範とするモデル触媒の開発を行った。酸素耐性ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼは、自然界に存在する水素を酸化する酵素であり、触媒活性中心に、ニッケルと鉄の二核構造を含んでいる。標準型のニッケル・鉄ヒドロゲナーゼは、酸素存在下では活性中心が酸化されてしまい、本来の水素酸化機能を失う。一方で、酸素耐性ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼは、酸素を水に還元することで活性中心の酸化を防ぐ防御機構を有している。即ち、酸素耐性ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼは、水素の酸化(ヒドロゲナーゼ機構)と酸素の還元(オキシダーゼ機構)を触媒できる特異的な酵素である。これらの反応機構は燃料電池のアノード(水素の酸化)とカソード(酸素の還元)と同じであるために、近年、酸素耐性ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼは非常に注目度が高い。しかし、その酸素耐性機構は未だ不明な点が多く、特に反応中間体は観測されていない。本研究では、世界で初めてニッケル・鉄錯体で酸素を捉えた反応中間体のエックス線構造解析に成功した。酸素-酸素結合の伸縮振動は、赤外分光法により同定し、鉄の酸化数はメスバウアー分光法により決定した。また、同位体ラベリング実験により、酸素を水に還元する反応機構を解明した。本成果は、論文(Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55(2), 724-727)とプレスリリース(非貴金属分子触媒で水素の活性化に続く「酸素の活性化」に成功 -白金フリー燃料電池の開発に応用-)にて発表した。本研究成果は、酸素耐性ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼの酸素還元機構だけでなく、燃料電池のカソードの反応機構の解明にもつながると期待できる。
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