研究実績の概要 |
本研究では、温度変化により、電子状態の変化を伴う相転移を示す混合原子価からなる一次元ナノワイヤー分子の開発を行った。目的とする物質は、(Bu4N)[FeIII(Tp)(CN)3] (Tp = hydrotris-(1-pyrazolyl)borate), FeII(ClO4)2・6H2O, 1,2-bis(4-pyridyl)ethane (bpe)を2:1:1の比で混合しMeOH中で反応を行うことで、赤色結晶{[Fe(Tp)(CN)3]2[Fe(bpe)]・5H2O}n (1)として得た。Feの電子状態を評価するためにメスバウアー測定を行い、高温相の293 Kでは2価と3価に帰属される四極分裂ダブレットが1:2の面積比で観測されたのに対し、低温相である123 Kと13 Kでは、FeII-HSに帰属されるピークが消失し、3種の金属種の四極分裂にピークフィットできた。これはすなわち、温度変化により[FeIII-LS(Tp)(CN)3]からFeII-HSへの電子移動が誘起され [FeIII-LS(Tp)(CN)3]2[FeII-HS(bpe)] (高温相)~[FeIII-LS(Tp)(CN)3][FeII-LS(Tp)(CN)3][FeIII-HS(bpe)] (低温相)の電荷移動相転移による電子状態変化が確認された。
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