研究課題/領域番号 |
26810042
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
関 朋宏 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (50638187)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 結晶多形 / メカノクロミズム / 発光 / 原子間力顕微鏡 / 相転移 / 単結晶 / 金錯体 / X線回折 |
研究実績の概要 |
本研究では、メカノクロミズムを利用した発光色制御に取り組む。メカノクロミズムは機械的刺激を印加することで、単一の化合物の固体の発光色1が発光色2に変化する現象である。本研究ではAFMを用いて結晶の一部のみの発光色を変化させ、発光色1と2の混合により発光色3を作り出す。機械的刺激を印加する力の程度や結晶面に対する方向を制御することで、たった1つのメカノクロミック化合物から発光をフルカラーチューニングすることを目指す。 現在までに、機械的刺激によりある金イソシアニド錯体の結晶の一部にのみ機械的刺激を印加しその部分のみ発光色を変換可能か調査を試みている。先端が微小なカンチレバーを用い、単結晶に対して的確に機械的刺激を印加する条件を検討中であり、結晶の一部のみ発光の切り替えにはまだ成功していない。 一方、上記の検討の過程で金イソシアニド錯体の前例のない光誘起結晶相転移挙動を明らかにした(Chem. Sci. 2015, 6, 1491-1497)。またこの錯体は、紫外線を照射するだけでジャンプすることを明らかにしており、新規アクチュエーターとしての応用が期待できる。この他にも固相の4色発光を切り替え可能な金イソシアニド錯体の合成とその結晶構造解析にも成功している(Chem. Sci. 2015, 6, 2187-2195)。ここで得られた成果を参考に、原子間力顕微鏡による微小領域の発光の制御に加え、今後アクチュエータとしての特性や多色発光特性も合わせて検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、機械的刺激によりある金イソシアニド錯体の結晶の一部にのみ機械的刺激を印加しその部分のみ発光色を変換可能か調査を試みている。微小なカンチレバーを用い、単結晶に対して的確に機械的刺激を印加することが困難であり、局所的な発光の切り替えにはまだ成功していない。現在は、バネ定数や共振周波数の異なる種々のカンチレバーを用い、局所的な発光特性の切り替えが可能か検討している。 一方、上記の検討の過程で金イソシアニド錯体の前例のない光誘起結晶相転移挙動を明らかにし、論文として報告した(Chem. Sci. 2015, 6, 1491-1497)。金原子間相互作用を形成している金錯体は、励起状態でその結合が強くなることが知られていたが、これまでは溶液中の短寿命励起種としてのみ実験的な観測がなされていた(T. Taharaら、 J. Am. Chem. Soc. 2013, 135, 538-541)。一方我々は、この現象が結晶内部の金属錯体にもに起こることを初めて明らかにし、その結果、結晶内部の分子配列が変化する相転移を示す。相転移前後の単結晶構造解析にも成功し、詳細な分子間相互作用の切り替わりに関しても明らかにすることができた。この他にも固体4色発光を切り替え可能な金イソシアニド錯体の発見とその構造解析にも成功しており、論文として報告している(Chem. Sci. 2015, 6, 2187-2195)。 これらの得られた成果は、本プロジェクト遂行の新しい指針を与えている。これまで得られた成果を参考に、AFMによる微小領域の発光の変化だけでなく、光応答性や多色発光特性も合わせて検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定は以下のように考えている。 (1)緑発光を示す錯体1の結晶の一部にAFMカンチレバーを用いて機械的刺激を印加しその部分のみ発光色を変換可能か検討する。更に、機械的刺激を印加する方法(力の強さやサイズ、向きなど)を種々検討し、様々な発光色を創出できるのかを検討する。(2)錯体1の構造類縁体を種々合成し、メカノクロミズム挙動のチューニングを試みる。機械的刺激を利用した発光色の制御に適した類縁体を合成しそれ以降の検討を行う。(3)ボールミルを用いて機械的刺激を印加し、メカノクロミズムが完結するのに要する最短の時間Tを算出する。次にボールミル時間を0からTまでの間で様々に変え、発光色が段階的に変化するのかを調査する。(4)ダイヤモンドアンビルセルを用い、錯体1の結晶に等方的な力を加え発光色を変化させる。AFMなどを用い特定の方向に機械的刺激が与えられた場合と異なる発光色変化を示すのかを調査する。(5)これまでに得られた成果をもとに、光応答性や刺激応答型の多色発光特性も合わせて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は、比較的少額であり、当初の計画通り予算をほぼすべて執行し研究推進のため有効活用できた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度予算と合わせ、試薬やガラス器具を購入しプロジェクトの達成のため計画的かつ有効に使用する。
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