本研究では、メカノクロミズムを利用した発光色制御に取り組む。メカノクロミズムは機械的刺激を印加することで、単一の化合物の固体の発光色1が発光色2に変化する現象である。本研究ではAFMを用いて結晶の一部のみの発光色を変化させ、発光色1と2の混合により発光色3を作り出す。機械的刺激を印加する程度を制御することで、たった1つの化合物から発光をフルカラーチューニングすることを目指した。 金イソシアニド錯体の構造類縁体の効率的な合成を目指し、48種の錯体R1-R2を合成した。これらの錯体は、R1位に6種、R2位に8種の電子吸引性・電子供与性の置換基を有しており、それら置換基の種類によって結晶構造や発光特性が異なることが期待される。このうちの28種もの化合物がメカノクロミズムを示すことを明らかにし、青から橙に及ぶ多様な発光特性示すことを見出した。また、全ての錯体の単結晶構造解析を行い、このうちの一つの化合物が「結晶-結晶相転移」に伴うメカノクロミズムを示すことを見出した。一般的なメカノクロミック分子はほとんどの場合「結晶-アモルファス相転移」に基づいて起こるため価値ある発見である。本研究によって特異なメカノクロミック分子を合成するための分子設計指針に確立につながると考えている。本成果は、J. Am. Chem. Soc.誌への掲載が確定している(DOI: 10.1021/jacs.6b02409)。
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