研究課題/領域番号 |
26810043
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西 弘泰 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70714137)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 金属ナノ粒子 / 局在表面プラズモン / 規則配列構造 / 自己組織化 / プラズモン誘起電荷分離 / 光アンテナ / LSPRセンサ |
研究実績の概要 |
本研究では、金属ナノ粒子の二次元規則構造体を作製し、それらを様々な高機能デバイスに応用することを目的としている。二次元規則構造体を作製するためには、ナノ粒子を効率的に電極あるいは基板へ担持する手法が必要となる。そのため、平成26年度は金属ナノ粒子の電極への担持方法を主に検討し、種々の素子の作製に利用した。 まず、当初の計画通り、ポリスチレンで被覆した金ナノ粒子を合成し、ドロップキャスト法またはスピンコート法によって、透明電極上に二次元ナノ構造体の作製を試みた。ドロップキャスト法では局所的な三次元規則構造体を、スピンコート法では条件を最適化することにより、広範囲にわたって二次元規則構造体を作製できることが明らかとなった。これらの規則配列構造は、共同的なプラズモンモードに起因するとみられる金属光沢を示すことが分かった。 一方で、pHを調整したクエン酸保護金ナノ粒子水溶液に透明電極を浸漬するだけで、高密度かつ凝集体の形成を抑制しながら金ナノ粒子が担持できることを見出した。本手法は、合成が簡便で非常に単分散なクエン酸保護金ナノ粒子を、配位子交換や、電極の表面処理を行うことなく担持できるため、非常に有用である。実際に、クエン酸還元法により合成した金-銀合金ナノ粒子を本手法で酸化チタン電極に担持し、プラズモン誘起電荷分離素子を作製することに成功している。また、同手法で作製した金ナノ粒子担持電極は、当研究室で本年度に開発された新規LSPRセンサ(電気信号出力型LSPRセンサ、電位走査型LSPRセンサ)の作製にも利用されている。その他にも、プラズモン誘起電荷分離現象の酸化力を評価するための電極を作製にも利用しており、多岐にわたった応用が可能であることが明らかとなった。 以上のように、金属ナノ粒子の担持方法の最適化を行い、新規手法方法を見出すことで、本研究の目的に直結する成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は、当初の計画通りポリスチレンで被覆した金ナノ粒子を合成し、限られた範囲ではあるが、自己組織化によって二次元あるいは三次元の金ナノ粒子規則構造体を作製することができた。さらに、金属ナノ粒子の電極への新規担持法を見出し、新規LSPRセンサやプラズモン誘起電荷分離素子の作製に応用ですることができた。この新規担持法を用いたナノ粒子の規則構造体の作製は試行段階であるが、簡便な規則構造体の作製方法としての応用が可能とみられる。従来法と比較して非常に簡便な手法であることもあり、来年度にさらなる発展が期待できる。 以上より、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に作製に成功した金ナノ粒子の二次元あるいは三次元規則構造体において、周期構造に起因した特異な光学特性の発現を目指す。具体的には、金ナノ粒子のサイズ、形状、粒子間距離を制御した規則構造体を作製し、ランダムな構造と大きく異なる特性を示す条件を探索し、実験的あるいは理論的な考察を行う。また、作製した構造体を用いて、高性能なLSPRセンサ、光アンテナ、プラズモン誘起電荷分離素子の作製を目指す。さらに、金以外の金属を使用する系についても検討を行う。 平成26年度に見出した新規ナノ粒子担持法については、メカニズムの考察を行い、種々の粒子に応用できるよう条件を最適化する。また、得られた知見を元に、二次元規則構造体の作製に本手法を適用することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、機能性ポリマーの合成に必要な液体クロマトグラフィー用の備品の購入を予定していたが、新規粒子担持法を見出し、当初の予定から研究計画を変更したため。予定していた支出の一部は、各種規則構造体や新規粒子担持法に関する実験に必要な消耗品、考察に必要な書籍、データ解析に必要なパーソナルコンピュータ等に当てた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進展具合に応じて、平成26年度に購入を予定していたクロマトグラフィー用の備品や、金ナノ粒子規則構造体の周囲のポリスチレンを取り除くための酸素プラズマ発生装置等の購入に使用する予定である。
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