研究課題/領域番号 |
26810046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大黒 耕 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60614360)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分子糊 / タンパク質 / 酵素阻害 / 結合力の増強 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、生体高分子に接着性を示す「分子糊」にリガンド(薬剤モデル)を連結し、接着によってリガンド分子の標的タンパク質への結合を増強させることができるかを検討した。研究実施計画においては刺激応答性の保護基をもつ分子糊を合成する予定であったが、コンセプトの実証を先行して行うこととした。トリプシンを標的タンパク質とし、阻害剤であるベンズアミジンを末端に連結した分子糊を2種類合成した。このうち、柔軟な分子骨格をもつ分子糊において大幅な結合能の増大が確認された。狙い通り、分子骨格に柔軟性を持たせることで、標的タンパク質の表面形状に適したコンフォメーションをとることが可能となり、その結果、強い接着が実現できたものと考えられる。これは本手法の汎用性を示す結果でもある。さらに、分子糊を連結させたリガンド分子の酵素阻害活性を評価したところ、元々のベンズアミジンの10倍以上の強さであることが明らかになった。現段階では、分子糊の非特異的な接着が生じるために生体への応用は困難であるが、当初の計画通り刺激に応答して接着性を発現する分子糊へと改変することで、この課題を克服することができると考えている。従来、ある薬剤設計をもとに、より強力な薬剤を開発するためには、分子設計と多段階の合成を繰り返し長期にわたる試行錯誤が必要であったが、本手法は特別な分子設計戦略や精密な有機合成実験を必要とせず、「薬剤に分子糊を連結するだけ」という簡便な方法で薬剤活性を増強させる汎用的手法につながる可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で初年度に予定していた、分子糊の接着を用いた薬剤効果の増強を実験的に検証することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
生体内の夾雑な環境で機能させることを考慮して、分子糊の接着性を切り替えるための仕組みを導入する。はじめに当初の計画で予定していた刺激応答性保護基の導入を検討する。また、標的タンパク質をより疾病治療に有効なものに拡張する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画を一部変更し、遂行順序を入れ替えたことに伴い、試薬・装置類の購入時期に変更を生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に当初予定していた測定装置類の購入を行う。
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