本研究では、「らせんがバネである」という概念に基づき、光や電場、酸化還元など、物理的な外部刺激を駆動力として自在に伸縮する二重らせんヘリケートの合成とその機能化、さらには、ヘリケートの中央や末端に金属配位部位を導入し、金属イオンとの配位により高分子量化したヘリケートから生成するフィルムやゲルの微視的な伸縮に伴う変化を巨視的レベルに増幅可能な系の構築を目指す。 (1)光による可逆的な伸縮運動の制御を目指すべく、フェノールオリゴマー(6量体)の中央に位置する2つのフェノール部位を光応答性分子であるトランス体のアゾベンゼンに置き換え、光駆動型伸縮ヘリケートの合成を試みた。重アセトニトリル中で行った反応の溶液のESI-MS測定より、一部目的のホウ素ヘリケートが生成していることが分かった。さらに、MALDI-TOF-MS測定を行ったところ、二量体のみならず、環状の高分子量体、すなわち、マクロサイクルも生成していることが明らかとなった。 (2)金属イオンとの配位結合を利用した伸縮ヘリケートの高分子量化を実現するために、中央にビフェニル部位を有するオリゴフェノール誘導体(6量体)の両末端にターピリジンを導入した配位子からなるホウ素ヘリケートおよび中央にビピリジン部位を有するオリゴフェノール誘導体(6量体)からなるホウ素ヘリケートをそれぞれ合成した。得られたホウ素ヘリケートは、伸縮するとともに、様々な金属イオンと配位することが分かった。
|