研究課題/領域番号 |
26810055
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
五東 弘昭 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80635235)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ラジカル / 有機分子触媒 / 有機合成化学 / 酸化的カップリング / TEMPO / ニトロキシドラジカル / 環境調和型 / グリーンケミストリー |
研究実績の概要 |
有機分子触媒を用いた環境に優しいラジカル的カップリング反応の検討を行い炭素-炭素、炭素-窒素、炭素-酸素結合生成反応を開拓することを目的とした。具体的には、①空気中の酸素で再酸化できるニトロキシドラジカル触媒の開発。②医薬品などによく見られる構造を有しラジカルカップリングが進行する基質の開拓。③計算化学によるメカニズム解明による収率向上。を行うことで達成することを目的としている。 本年度は、申請者らが合成し、酸化的カップリングにおいて活性であることがわかっているニトロキシドラジカルであるBPAN(tert-butyl(10-phenyl-9-anthryl)-nitroxide)のフェニル基部分を様々な置換基へと変えた新規なニトロキシドの合成に成功した。また、その触媒を用いて更なる酸化的カップリング反応の検討を行った。さらに、サイクリックボルタンメトリー等を利用して物理有機化学的なデータからも触媒能を評価し、実際の反応を行っただけでは得られない情報も得て複合的に研究を進めた。現在、合成したニトロキシドラジカルの各種機器分析による解析値によって、活性な触媒を判別する方法を考察中である。 研究成果については、2014年3月に東北大学で行われた基礎有機化学討論会にて、ポスター発表を行い成果を公表した。また、2015年5月には、横浜国立大学で行われる有機合成化学協会のシンポジウムで発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、触媒合成及び触媒の活性評価を中心に行った。さらに、サイクリックボルタンメトリー等を利用して物理有機化学的なデータからも触媒能を評価し、実際の反応を行っただけでは得られない情報も得て複合的に研究を進めた。また、ニトロキシドラジカルのIR, UV, ESR等の機器分析による解析値によって、活性な触媒を判別する方法を考察中である。このように様々な観点から情報を得て研究を進めることによって、新しい分野である本研究を円滑に進めている。 現在、モデルとしている反応において、開発したBPANが既存の触媒であるTEMPOやAZADOなどよりもが高活性なことを見出しており、この類縁体を中心に検討している。さらに、ニトロキシドラジカルと既存の基質を用いて、触媒量を1mol%以下にできる触媒を探索した。溶媒や温度条件についても詳細に検討した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、触媒の合成及び活性評価のみならず計算科学を利用し、水素引き抜きの起こりやすさをDFT計算により結合乖離エネルギー等を計算することにより評価し、新たな基質についての反応性を予測する。さらに、反応遷移状態や各段階の活性化エネルギー、触媒の酸化還元能等を調べて反応機構の解明に役立てる。また、電子がどのように移動していくのかを議論するには、基質のフロンティア軌道のエネルギーレベルやフロンティア電子密度の計算も行うことが必要となると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、まず、論文投稿のための査読費用が当初よりも少なかったことがあげられる。また、初年度ということもあり、研究成果が論文投稿の水準にまでは達しなかった部分があることがあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては、論文の投稿を増やし、海外文献の翻訳のための謝金として使用すること、などを計画している。
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