研究課題/領域番号 |
26810056
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
南保 正和 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任助教 (10705528)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アリールアルカン / パラジウム触媒 / アリール化 / C-H官能基化 / 有機硫黄化合物 / スルホン / トリアリールメタン |
研究実績の概要 |
本研究では生物活性化合物に頻繁にみられる多置換アリールアルカン化合物群の効率的な合成手法の確立を目的とし、本年度はそのコアとなる新規テンプレート分子の開発に着手した。これまでに我々はパラジウム-N-ヘテロサイクリックカルベン触媒による炭素-スルホン結合のアリール化を鍵としたトリアリールメタン類の3段階合成に成功しているが、反応の進行に高温が必要であり官能基許容性や不斉反応への展開に改善の余地が残されていた。そこでテンプレート分子となる硫黄化合物を新たに設計し、炭素-スルホン結合のアリール化を検討したところ極めて有効な化合物をいくつか見出すことに成功した。従来の高温での反応条件と比較して、室温付近でも進行することが明らかとなり、生成物の官能基許容性の向上が期待できる結果を得た。新規テンプレート分子は市販品から2段階ワンポットで容易に合成でき、グラムスケールでも高収率で合成が可能であることからも本反応の有用性が実証できたと考えている。 また共同研究により本反応で得られた新規トリアリールメタン類が植物細胞の分裂阻害活性を示すことが明らかとなった。農薬をはじめとする植物細胞の分裂阻害活性を示す薬剤は古くから知られているが、細胞形状が異常に変化するため非可逆的な薬剤がほとんどであった。我々の見出した新規トリアリールメタン類は細胞形状を損なうことなく細胞分裂のみを阻害し、かつ可逆性を示すユニークな性質を有することが分かった。植物、動物特有の細胞分裂メカニズムの解明につながる興味深い結果と考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の計画に基づき計画した実験はすべて遂行することができ、2年目の研究計画の達成に向けた成果が得られつつある。ただし2年目も一部継続して検討する必要があると考えており、達成度は(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後新たに開発したテンプレート分子を用いて、多様なアリールアルカン類の最短工程合成を達成する。より実用的な合成を目指し、one-potでの大量合成や不斉補助配位子を用いた不斉反応への展開を検討する。またアリールアルカン骨格を有する様々な生物活性化合物の合成にも着手する。
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