研究課題/領域番号 |
26810057
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 英人 名古屋大学, 教養教育院, 講師 (70706704)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ナノグラフェン / パラジウム触媒 / オルトクロラニル / アリール化 / π拡張 / APEX反応 / 炭素水素結合変換 / 多環芳香族炭化水素 |
研究実績の概要 |
平成26年度は多環芳香族炭化水素(PAH)のK領域選択的な直接π拡張反応(APEX反応)の開発とその機構解明をおこなった。 フェナントレンやピレンといったPAHに対し、パラジウム触媒・オルトクロラニル存在化、π拡張ユニットとしてジベンゾシロール類を用いる事で、K領域と呼ばれる領域選択的にAPEX反応がが起こり、π拡張されたPAH、ナノグラフェン類を与えることを見いだした。量子化学計算によってアリールケイ素化合物とパラジウム・オルトクロラニル触媒のトランスメタル化、続くPAHのK領域での配位、カルボメタル化を経て結果的に官能基化されていないPAHの炭素ー水素結合の形式的な直接変換が起こり、これまでにないK領域のAPEX反応がおこっていることが明らかになった。K領域をもつ適切なPAHテンプレートと適切なジベンゾシロールを合わせ用いることでこれまでにない大きさ、構造のナノグラフェンを短段階かつ構造選択的に合成することにも成功し、これらの成果をまとめて論文発表を行った(Nature Commun. 2015, 6, 6251. 国内外ニュース・新聞・ハイライト12件)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り速度論的実験、量子化学計算などによって芳香環直接π拡張反応の反応機構解明に成功し、オルトクロラニルが酸化剤としてだけでなく配位子として働いていること、高いK領域選択性、律速的なカルボメタル化反応などの知見をえることに成功したため、概ね順調に研究が進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今回電子不足なカチオン性パラジウム・オルトクロラニル種の発生、芳香環のπ配位、カルボメタル化という機構を経て芳香環の直接π拡張反応がおこっていることが明らかとなった。この知見は他の電子不足金属触触媒の適用やPAHのK領域以外でのπ拡張を潜在的に可能にすると期待できる。これらの知見をもとに平成27年度、28年度は計画通り多種多様なAPEX反応の開発とグラフェンナノリボン合成へと展開する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H27年度、H28年度の配分額が当初希望額より少額であったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
H26年度配分額の一部を繰り越してH27、H28年度の物品費等に使用する。
|