研究課題
平成26年度および27年度に開発した芳香環直接π拡張法(APEX反応)を駆使し、幅、長さ、エッジ構造が制御された“均一な”グラフェンナノリボンの合成を行った。パラジウム塩、銀塩、オルトクロラニルを用い、bay領域がケイ素架橋したフェナントレン誘導体をもちいると、フェナントレンのK領域で逐次的にπ拡張反応が進行し、cove型グラフェンナノリボンが一段階で合成できることを見出した。本反応は重合反応とグラフェン化(あるいは脱水素環化、酸化)が同時に行える画期的重合反応であり、一段階π拡張重合(APEX重合)と名付けることとした。合成できるグラフェンナノリボン(GNR)は周辺構造がcove型のGNRであり、分子量分布測定の結果から15万程度の数平均分子量をもつ長さ100 nm以上のGNRであることがわかった。またこのAPEX反応を応用し、様々な芳香環とシロールユニットとの自己APEX重合反応、交互APEX重合反応にも成功した。原子間力顕微鏡(AFM)の結果から、合成したGNRはグラフェン基盤上での自己組織化能を有していることもわかった。本結果は国内特許申請(特願2016-014380)とPCT出願(PCT/JP2017-003037)を行っており、論文投稿準備中である。本年度の研究結果は当初予定していた研究計画以上の進展をみせており、また合成したGNRの物性解明についての共同研究を行うきっかけとなるなど、期待される以上の結果をもたらした。
すべて 2017 2016
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