研究課題/領域番号 |
26810058
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
仙波 一彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30712046)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 交差カップリング反応 / 金属協働触媒 / パラジウム / 銅 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,金属化学種の不飽和化合物への付加による有機金属種の触媒的生成を鍵とする交差カップリング反応の開発を目的としている。本年度は,付加化学種として銅ヒドリドおよびボリル銅を用いた反応の開発を行った。その結果,パラジウム/銅協働触媒によるアルケンおよびアルキンのヒドロアリール化反応,アルケンのアリールホウ素化反応の開発に成功した。詳細は以下の通りである。 アルキルおよびアルケニル有機金属反応剤を用いる交差カップリング反応は,ハロゲン化アリールのアルキル化およびアルケニル化反応として重要である。一般的に,アルケンおよびアルキンのヒドロメタル化によって事前調製した有機金属反応剤を用いて反応を行うため,ステップエコノミーの点で問題があった。一方,本年度開発したパラジウム/銅協働触媒によるヒドロアリール化反応は,系中で銅ヒドリドのアルケンおよびアルキンへの付加により触媒的に生成する有機金属種を用いるため,ステップエコノミーの点で優れた反応である。また,本手法を用いることにより,生理活性物質の合成も達成した。 アルケンのカルボホウ素化反応は入手容易なアルケンから複雑なアルキルホウ素化合物を得る強力な手法である。しかしながら,既存の反応は大部分が分子内反応であり,分子間反応は高反応性の基質を用いた例に限られていた。本年度開発したパラジウム/銅協働触媒によるアルケンのアリールホウ素化反応は,安定で入手容易なビスピナコラートジボロンおよびハロゲン化アリールを用いたアルケンの分子間アリールホウ素化反応であり,その重要性は高い。さらに,本反応を用いた生理活性物質の短工程合成にも成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,銅ヒドリドを用いる炭素-炭素不飽和化合物のヒドロアリール化反応およびボリル銅を用いる炭素-炭素不飽和化合物のカルボホウ素化反応の開発を目標としていた。前者については論文執筆中であり,後者についてはすでに論文発表を行った。さらに,その研究過程で銅触媒によるアルキンの部分水素化反応を見出し,論文発表を行った。以上の点から,本年度は当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,アルキンのアリールホウ素化反応および水素を還元剤として用いる典型金属反応剤を全く用いない交差カップリング反応の開発を行う。 アルキンのアリールホウ素化反応については平成26年度に見出したパラジウム/銅協働触媒によるアルケンのアリールホウ素化反応の知見を用いることで,すでに本反応が進行することを認めている。末端アルキンを用いた場合には触媒により位置選択性を制御可能であることを見出している。このような位置選択性の制御は他に例がない。今後は,基質一般性および反応機構を詳細に調査し,論文投稿を目指す。 水素を還元剤として用いる典型金属反応剤を全く用いない交差カップリング反応については,平成26年度に得られた,パラジウム/銅協働触媒によるヒドロアリール化反応および銅触媒によるアルキンの部分水素化反応で得られた知見をもとに,パラジウム/銅協働触媒によるアルケンまたはアルキンのヒドロアリール化反応の開発を行う。パラジウム/銅の組合せに限らず,種々の金属の組合せの可能性も調査し,触媒の最適化を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,所属研究室においてすでに存在する試薬を用いることができたため,物品費が予想以上に少額で済んだため,次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,反応開発においてパラジウムと銅以外にも様々な金属触媒を用いることが予想されるため,平成26年度からの繰越金は物品費に当てる。
|