研究課題/領域番号 |
26810060
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岩崎 真之 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90604091)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 直截官能基化 / パラジウム / 有機硫黄化合物 / 有機セレン化合物 / 配向基 |
研究実績の概要 |
有機カルコゲン化合物は、その特異な性質から有機化学において重要な位置を占めている。中でも、アリールカルコゲニドは、機能性有機分子や生物活性物質中によく見られ、非常に有用な化合物群である。その一般的な合成法は、ハロゲン化アリールと有機カルコゲン反応剤とのカップリング反応である。この反応は収率良く進行するものの、出発物質としてハロゲン化物を調製しなければならない。そこで、芳香族炭素-水素結合を直截的にカルコゲン化することができれば、理想的なアリールカルコゲニドの合成法となる。われわれは、適切な配向基を用いることで、パラジウム触媒による芳香族炭素-水素結合の直截硫黄化反応が進行することを見いだした。パラジウム/ホスフィン触媒存在下、2-アリールピリジンとジスルフィドの混合物を DMSO 溶媒中加熱することで、対応する硫黄化体を良好な収率で得ることができた。本反応は、高い基質一般性をもって進行し、さまざまなアリールスルフィドを合成することに成功した。また、本反応に利用するジスルフィドは、基質に対して半当量で十分であり、ジスルフィドの硫黄部位は両方とも生成物に組み込まれることが明らかになった。さらに、ジスルフィドの代わりに、ジセレニドを用いることで、対応する炭素-セレン結合生成反応が進行することも見いだした。その後、配向基に関する検討の過程で、用いる配向基を変えることで、ナフタレン環の反応点を完全に制御することにも成功している。これらの反応は、これまで達成できなかった直截的なアリールカルコゲニドの合成法であり、機能性有機材料ならびに医農薬品の合成プロセスを一変する手法となりうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成 26 年度は、いくつかの触媒的な炭素-水素結合の直截カルコゲン化反応を開発することに成功した。本物質変換法に適用可能な基質は、未だに芳香族炭素-水素結合に限られているが、より不活性な炭素-水素結合のカルコゲン化反応に関する知見も着実に蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に基づいて、さまざまな不活性炭素-水素結合のカルコゲン化反応の開発に取り組む。また、反応機構に関する詳細な知見を得るために、反応中間体の単離・同定および量論実験をおこなう。さらに、開発した触媒反応を利用して、機能性有機分子や生物活性物質を合成することで、本反応の有用性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通り研究費を使用することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成 27 年度は、研究費の大半を薬品や実験器具類などの消耗品費の購入に充てる予定である。
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