研究課題/領域番号 |
26810061
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西川 慶祐 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 助教 (60708064)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 天然物合成 / 着性阻害活性 / ヨウ化サマリウム / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
過去に,貝及び海藻の付着を抑制するための船底塗料に用いられた有機スズ化合物は,極めて微量で巻貝をオス化させる生殖器異常(インポセックス),殻の奇形化,そして成長阻害等の海洋環境の汚染問題を引き起こし,新規の環境低負荷型の防汚剤の開発は急務である.研究代表者は船底に付着する貝類が嫌う海洋天然物を有機合成することにより,海洋環境に優しい防汚剤が開発できると推定し,ムラサキガイの足糸形成を阻害する活性をもつ,ドラスタンジテルペンを合成標的物として選定した.本研究ではターゲット化合物の合成手法を確立し,次に構造活性相関研究へと展開することで,活性発現に重要な構造因子を特定する事を目的とした.本年度は研究実施計画に基づいて,ターゲット天然物の全合成経路確立を目指し研究を進めた.具体的には,安価で大量購入可能である1,3-プロパンジオールを出発原料に,八工程で直鎖上のヨウ化物を合成した.次に1,3-シクロヘキサンジオンのα位に先程合成したヨウ化物を求核付加により導入しようと試みたが,目的のC-アルキル化体は残念ながらマイナー成分であり,主にO-アルキル化体が得られた.検討の末,ハンチュエステルを用いた還元的クネベナーゲル縮合を本反応系に応用する事で,目的のC-アルキル化した付加物を高収率で得ることが出来た.次にアリルクロリド部分を構築し,キラル塩基を用いて光学活性体シリルエノールエーテルを経た後,カルボニル部位を水素化ジイソブチルアルミニウム還元する事で基質の不斉化を検討したが,エナンチオ過剰率の高い生成物を得る事は出来なかった.さらに検討を重ねコーリー・バクシ・柴田還元反応の変法を用いる事で,ヨウ化サマリウムによる環化反応の前駆体に構造上近い基質を,エナンチオ選択的に合成することに成功した.現在,天然物の中央七員環部位構築を目指し,立体選択的環化反応を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では,最初の一年で目的の着生阻害活性物質の全合成を完了する計画であり,二年目ではケミカルバイオロジー研究への展開を目指し,類縁体合成を中心に研究を進展する予定であった.しかし二十工程以上の合成経路をゼロから一年で確立する事は一般的に難しく,研究計画の見積もりが少なからず甘かったと深く反省する.従って二年目も引き続き,ターゲット化合物の合成を目指し研究を進める.初年度で達成できた事は,還元的クネベナーゲル縮合や不斉還元等の鍵反応を経て,ヨウ化サマリウムを用いる環化反応に適用する,前駆体基質に構造上非常に近い光学活性体を合成することに成功した.
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今後の研究の推進方策 |
逆合成解析に基づいて,ヨウ化サマリウムを用いる立体選択的環化反応を用いて中央七員環B環と,ナザロフ環化反応により五員環C環を構築し,ターゲット着生阻害活性物質の全合成を達成する.さらに類縁体合成へと展開し,構造活性相関研究へと展開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,別の財団からの研究費を消耗品等に当てたため,多少の未使用分が発生し年度内に研究費を執行することが出来なかった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度については,前年度以上に合成試薬や溶媒などの消耗品が必要になると考えられるので,前年度の未使用分で対応したい.27年度は可能な限り計画に基づいて研究費を執行していくように努める.
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