研究課題/領域番号 |
26810066
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
藤田 恭子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (90447508)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水和状態 / イオン液体 / 凝集体 / 再生 / タンパク質 |
研究実績の概要 |
In vitroな環境において、安定性の問題により凝集化してしまったタンパク質の再生を目指し、今年度は熱変性により凝集化したタンパク質の溶解について検討を行った。Buffer中で加熱を行うことで変性し、白色沈殿として得られた凝集体をサンプルとして用い、水和イオン液体と混合した。異なる種類のイオン液体を用いて、混合時間や、混合中の温度条件などを変えながら溶解に及ぼす影響の検討を行った。その結果、ほとんどのイオン液体中では凝集体の溶解は確認できなかったが、コリニウムカチオンとリン酸二水素アニオンからなる水和イオン液体中で温度をかけながら混合した場合、凝集体の溶解を示唆する透明な状況となった。 また、大腸菌内で異種発現させ、封入体として得られたタンパク質が上記と同じイオン液体中に溶解し、水溶液中と類似のフォールディング状態を形成していることが蛍光スペクトルより確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖鎖認識タンパク質(レクチン)の一種であるコンカナバリンAを用い、bufferに溶解中に熱変性により形成した凝集体の水和イオン液体中への溶解を試みた。イオン液体の種類を変えたり、水和イオン液体中に混合後、熱処理を行ったりすることで、条件を変化させ溶解状態への影響について検討を行った。その結果、これまでにタンパク質の高次構造を保持したまま溶解が観測されているコリニウムカチオン([ch])とリン酸二水素アニオン([dhp])の組み合わせに水をわずかに添加して作成した水和[ch][dhp]中で撹拌しながら、加熱を行った凝集体が透明に溶解することを見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に溶解が確認された水和イオン液体を中心に用いて、凝集体の溶解に適した条件の探索を行う。加熱条件(温度、時間)や、冷却過程(速度、回数等)などによる溶解性への影響を明らかにする。 また、水和イオン液体二相系を構築し、イオン液体に溶解したタンパク質を水相へ移動させるような系の構築を試みる。イオン液体/水の二相系でのタンパク質の直接移動が理想的であるが、困難な場合にはイオン液体から水相への移動の前により親水性のイオン液体相への相移動をもう一段階加えることで効率的な移動の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、熱処理により形成した凝集体の溶解の可能性が観測された限られた種類の水和イオン液体について、溶解条件を変えることによる影響の探索を中心に行った。そのため、購入を予定していた試薬類の購入が少なくなり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、異なるイオン液体を用いた溶解性の向上を計画している。そのため、新規試薬類の購入とこれらを用いて新規イオン液体を合成する。合成を効率的に進めるために必要となるエバポレータの購入を計画している。
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